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ホワイトカラーエグゼンプション導入について

ホワイトカラーエグゼンプションについての日本タイムマネジメント普及協会の提言を発表いたします。

まず提言に至った経緯の概略です。
 ・法制化される可能性が極めて高いこと
 ・しかしその論議が不十分かつ的を射ていないこと

ホワイトカラーエグゼンプションについては、政府、経団連、連合および各政党にて公式な見解が示されていますが、労働環境の抜本的な変更が法的になされる割には、論議が不十分であるばかりか、残業代等の賃金の問題に偏っていてことの本質に迫ったものはありません。
まず、政府・厚生労働省に関していえば、「ホワイトカラーエグゼンプション」という言葉の使用から改めるべきだと思います。はっきりいってわかりづらい。有耶無耶のうちに法制化しようとしているのかと勘繰りたくもなります。大切な法律です。万民にわかるような表現にすることから始めてもらいたいものです。「法定労働時間の適用除外」とはっきりいうべきです。
次にこの「法定労働時間の適用除外」が論議される出発点に「裁量型経営」なる概念の存在があります。政府も経団連も連合も各政党もおしなべて、今回の議論の契機として裁量型経営を取り上げています。しかしこの裁量型経営なる概念は、私にいわせれば非論理的です。この裁量型経営とは何かをとことん議論しなければ「適用除外」は語れないといえます。

では次に提言の概略です。
 ・「適用除外を実施できる企業とそうでない企業を明確にわける」

この一点のみが提言です。この結論に至る理由は理論的に証明可能です。それは「裁量型経営」を再定義することからはじまります。詳細については、「企業変革概論」(※)をご一読ください。簡単に説明するとどんな仕事にも「はじめ」と「おわり」があり、「はじめ」をコントロールできるのは個々の従業員であり、「おわり」をコントロールできるのはその仕事の管理者(労働法的にいえば業務の監督者)であるという事実です。また同様にどんな仕事にも「質」と「量」が存在し、「質」をコントロールできるのは個々の従業員であり、「量」をコントロールできるのは管理者です。このように全ての仕事は、その仕事に従事している従業員にしかコントロールできない要素とその従業員の管理者がコントロールするものとのセットで初めて成立するという「仕事のしくみ」があります。
現状における裁量型経営はフレックスタイム制であったり、サテライトオフィスであったり従業員の個々の判断で業務を遂行することとなっていますが、「仕事のしくみ」から考察すれば、全ての仕事に個々人の裁量的要素が含まれているということです。と同時に管理・監督者の判断要素も含まれています。
現状の論議は前者の個々の従業員にのみ焦点が当てられていますが、この考え方からすると同時に管理・監督者(組織)にも焦点が当てられなければ間違えた結論になる可能性が高いということです。
現に長時間労働の原因を考えれば、個々人のスキル不足もありますが、上司の指示命令の曖昧さなども上位に位置づけられます。つまり効果・効率的に仕事を進めるには個々の従業員だけでなくその従業員の所属しているチーム・組織の双方の創意・工夫によって実現するということです。
今回の法制化の流れを見るとチーム・組織の創意・工夫は論議されている形跡がありません。仕事のしくみから考えるとおかしなことです。
仕事の成果を挙げるという原点に立ったとき、取組むべき課題は大きく分けて二つです。個々の従業員のスキルアップとチーム・組織の環境整備です。この環境整備についても説明すると長くなりますので前述の「企業変革概論」(※)でご確認ください。このことも簡単にいってしまえば、メール環境がありながら社長や部長から一斉メールが従業員に定期的に配信されないような組織は環境整備されているとはいえません。(方針・指示が不明確な組織となる)

今回の提言を最後に一言でまとめれば、環境整備の出来ているチーム・組織は「適用除外」が可能であるが、そうでないチーム・組織は従業員に現状でも多大なる負荷を掛けているので、もし「適用除外」を導入すれば、貴重な人的資源が流失し、結果として企業経営が成り立たなくなる危険性をはらんでいるといえます。
そして誠に残念なことに環境整備の出来ている企業組織はほとんど存在していない現実があります。今一度この現実を見つめるべきではないかと思います。

とはいっても現状のままで法制化される可能性もかなりあります。その際は、「適用除外」労働者の源泉徴収・年末調整は廃止すべきでしょう。「適用除外」労働者にも経費を認め確定申告を認めるのが「裁量型経営」を標榜するなら筋だと思います。

(※)企業変革概論とは・・・企業が今後取組んだ方が良いと感じていること、考えたことをまとめたものです。
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