四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「無駄な仕事と重要な仕事」


前節において、仕事の達成度合と優先順位の関係について考えてみた。本節では、生産性向上の成果に前節のパレートの法則がいかに活用されているかどうか等を考えてみる。

新入社員研修において、多くの講師が語ることに、「ムダ・ムラ・ムリ(3ムダラリ)」の排除がある。仕事を効率よく進めるための一つの定番的な言い回しである。しかし、皆さんの職場において、この「3ムダラリ」の排除運動は、定着しているだろうか。また、成果は出ているだろうか。更には、全員、やる気になって取り組めるテーマであろうか。一見、この「3ムダラリ」は、パレートの法則に合っている様に思えるのだが……。

また、一方、昨今の時短、リストラ等の生産性向上の施策においても、この「3ムダラリ」対策をその主要なテーマとして取り上げている企業が多い。各部門での作業、仕事を列挙し、その中から、ムダと思われる業務項目を抽出し、業務フローから排除する運動である。

しかし、私達に相談が舞い込んでくる企業の多くは、それらの取り組みを行っても、成果が出ない、確認できない、というケースが目立つ。生産性向上の取り組みのスタート段階で、相談に来るケースは、稀である。つまり、「3ムダラリ」をはじめとして、現在紹介されている生産性向上の取り組みの方法は、大きな問題を抱えているということだと判断している。

では、どうして、うまくいかないのか。

考えられるポイントは、大きく二点ある。一つは生産現場における取り組みと、事務現場における取り組みでは、本質的に異なるにもかかわらず、同様な手法で行おうとしている点、もう一点は、無駄な仕事の排除が即、重要な仕事の把握には結び付かない点、または、業務時間の捻出のために、ムダな仕事の排除を行っている点である。前者は、再三述べた通り、事務現場での生産性向上を考える時の対象は「人」であり、生産現場の場合は、生産ラインやシステムといった「非人間的」なものである。つまり、事務現場の対象は流動的であり、生産現場のそれは固定的である。これは、無駄な作業の排除というポイントに絞って考えても、生産現場は固定化しているので、ムダはムダとして普遍的に誰もが共通に認識できる可能性が高いが、事務現場においては、人が介在し、流動的であるために、ある人に対してムダな仕事も、別の人に対しては極めて重要なこともあり、一概にムダな仕事の特定ができないのだ。つまり、現実的な施策としては、事務現場においては、各業務、仕事毎に、ムダ項目を見い出すか、または、重要な項目を見い出すかしか、方法がないのである。組織ぐるみでムダの特定をするのではなく、組織ぐるみで、一人一人が自分の仕事におけるムダ項目、できれば重要項目を見つけ出す社風なり、空気が必要である。

また、後者においては、ムダ項目を排除し、捻出できた時間に何をやるかが、パレートの法則を考えても極めて重要なことがわかる。しかし、ムダ項目は把握できても、重要な項目の把握ができていなければ、せっかく捻出した時間に、ムダな仕事を行ってしまう危険性は極めて高いのだ。その結果、ムダを排除しても成果が出ない構造となってしまうのだ。このことより、ムダ項目の発見をするより、重要な項目を発見し、その仕事のための投下時間を優先的に確保することの方が、より現実的で実行性も出ることとなる。

また、一人一人のモチベーション、モラルの視点からも、ムダを探すより、重要なことを発見することに頭と労力を投下することが、やる気の向上にも、業務処理のスキルアップにも直結すると確信している。


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