四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「他人との関わりと水路化現象」


前カリュキラムにおいて、考え方として重要な仕事の発見が生産性向上に与える影響の大きさを述べた。しかし、現実的な私達の仕事において、重要な仕事を発見することは、比較的容易であるが、それを実行するには、極めて困難が伴うのも事実である。すでに優先順位について触れたが、この困難が伴うのは、日々の私達の仕事には、他人という相手があり、その存在により、当初考えていた優先順位は、時々刻々と変化せざるを得ないのが現実である。それに、いかに対処するかが、このセルフマネジメントの問題でもある。

それでは、ここで、私達の行動パターン、つまり優先順位と、それに伴うセルフマネジメントの実態について少し考えてみたい。

1. 難しい仕事より簡単な仕事
2. 時間のかかる仕事よりすぐ終わる仕事
3. 新しい仕事より慣れた仕事
4. 自発的な仕事より命令、頼まれた仕事
5. 重要な仕事より期限が迫った仕事

以上に列挙したのは、私達が無意識のうちにとってしまいがちな一つの仕事の着手のパターンである。心当たりがあるものばかりだと思う。弊社では、これらの行動パターンを「日常業務の水路化現象」と呼んで、生産性向上にブレーキをかける私達の無意識の行動パターンとして位置付けている。これらの行動パターンを、前に述べたパレートの法則に照らしてみれば、「啄木現象」に陥る傾向の強いものばかりである。そして、それは無意識のうちに行われる。つまり、しみついたクセとなってしまった行動パターンである。逆説的ではあるが、生産性を低下させる「コツ」の様なものである。その様な悪い「コツ」にも関わらず、とりたてて問題とならないのは、この水路化現象が、日本中、世界中で発生し、「赤信号、皆で渡れば恐くない。」現象と言える程、悪い意味で定着しているからにすぎない。つまり、私達の自己統制(セルフコントロール)の根底に、深く根を下ろしているわけだ。

この状態で、重要な項目を発見しても、実務レベルでは、それが実行できないのも当たり前、つまり、セルフマネジメントは困難を極めることとなる。水路化対策は、その意味でも生産性向上のための主要な項目である。対策を考えるにあたり、なぜ水路化が発生するのか、その原因を突き止めなければ対策も出せない。では、原因はどこにあるのか。

それを導き出すヒントは、既に述べてある。つまり、仕事には、人が介在する。人も、「自分」と「他人」に分類できると再三述べてきた。ヒントはそれである。水路化発生の原因は、仕事における「人」への重点の置き方にある。つまり、「他人」への重点の置き過ぎ、「自分」の欠落にあると断言できる。

別の表現をすれば、自らを見失い、流されて仕事をしてしまったということである。

列挙した項目をじっと考えれば、すべて他人を意識しすぎた結果、発生していることがわかる。難しい仕事より、簡単な仕事から着手するのは、失敗したり上司がどう思うだろうかとか、得意先に迷惑がかかるとか、他の仕事が目いっぱいで、その仕事の相手を考えると、やれるところから少しでもやろうとか、である。仕事には、「他人」がいることは、既に述べているが、「自分」と「他人」のバランスを崩すと、水路化が待ち構え、「啄木現象」に引きずり込まれる状況に、すぐなってしまうのである。

その意味でも、自分が中心となる重要な仕事(優先順位の高い仕事)に投下する時間を事前に確保することが、大変重要なこととなる。そして「いいクセ」づけのためのトレーニングは、不可欠な条件となるはずである。


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