四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「『パレートの法則』と石川啄木」


優先順位について、もう少し、話を進めよう。

皆さんは、「パレートの法則」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

パレートは、19世紀のイタリアの社会経済学者とでもいうべき人で、ある時、一国の富の分布について調査した。その結果、どの国でも、上位2割の資産家の資産の累計が、その国の資産の8割を占めることを発見した。これが、「パレートの法則」とか、「2割8割の法則」と呼ばれるもので、20世紀の今日も尚、至る所で活用されている。具体的には、昨今のリストラブームにおいて、売上の低い下位8割の中から廃止すべきラインや事業部の選定がされたり、QC活動で、発生頻度の高い上位2割の問題点の中から、テーマが選定されたり…といった形で活用されている。

さて、この法則を前述の優先順位と実績(仕事の成果)の話に照らし合わせてみると、皆さんの仕事の成果の80%は、優先順位の高い仕事の上位20%で達成できてしまうということが言える。反対に、もし、優先順位の低い下位80%に仕事にすべての時間を費やしたとしても、得られる成果は、全体の20%にすぎないということである。

つまり、「いくら時間を投下しても、優先順位に問題があると成果があがらない」のである。これでは正に、「働けど、働けど、我が暮らし楽にならず。」…ということで、以後、これを「石川啄木現象」と呼ばせて頂きたい。(啄木さん及び、啄木さんファンの方々には、申し訳ないが…)

さて、上記の点を考慮すると、仕事を進める上で重要なことは、「大事な仕事、優先順位の高い仕事をいかにキャッチするか、または、それをキャッチするセンスをいかに鍛えるかにある。」と言っても、過言ではない。ところが、最近のリストラや生産性の向上の取り組みをみると、「ムダな仕事捜し」に、その全力を挙げているのが、各社の実情のようである。しかし、いかに「ムダな仕事」を見つけ出し、それを排除しても、その分「重要な仕事、優先順位の高い仕事」を行わなければ、実は何の意味もないのである。誤解されては困るが、「ムダな仕事の排除」=「重要な仕事への取り組み」とは、必ずしもならない。このことを認識していないと、やはり啄木現象は、私達の日常業務の中に、しっかりと根を下ろしたままの状態になってしまうのである。

トレーニングコースの受講者の日英での追跡調査によると、弊社ノウハウを導入する前と、導入した後では、重要な仕事に投下する時間が、少ない方で20%、多い方で60%も増えていることがわかる。また、その生産性は、20%から30%以上向上していることがわかる。これは、大変注目に値するデータである。なぜなら、これは、「重要な仕事に投下する時間が増えると共に生産性が上がった。」ということと同時に、「重要でない仕事に投下する時間が減少、または、なくなっても、生産性は低下しない。」ということを意味しているからである。このことからも、重要な仕事、優先順位の高い仕事を発見し、その処理のための時間を確保することが、極めて重要なことがわかる。

生産性向上のためにも、啄木現象を回避する意味でも、「パレートの法則」を意識し、「無駄な仕事の排除」ではなく、「重要な仕事の発見」に注意を向けることを、心からお勧めする。


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