四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「生産性向上の三要素」


さて、前節では、仕事には、誰にでも認識できる、客観的な面と、一人一人にしかわからない主観的な面が存在することを把握した。そして、私達の仕事がうまく進まないのは、これら二つの面が、バランスを崩していることに原因があることがわかった。
では、これらをバランスよくさせるためには、一体どうしたらよいのだろうか。

本題に入る前に、どうして主観的側面と客観的側面が重要かを、もう一度確認しておこう。

まず、仕事の主体は、「人」であった。「人」における主観的側面といって、まず浮かぶのは、モチベーション、やる気、責任感、達成感等である。

なかでも、「人」が仕事に取りかかる際、一番大切なのが、その仕事に対する理由と目的、即ち、モチベーションである。モチベーションがなければ、やる気も起こらず、仕事に対する責任感も低下する。

一方、仕事は、「共同作業」であり、そこには必ず、「自分」と「他人」という複数の「人」が存在すると語った。自分以外の「人」が関わるとすれば、当然そこに、共通の認識が必要となる。そこで大切になってくるのが、誰にでもわかる、客観的な基準の設定である。

では、これを、仕事を始める際の、プロセスの中で考えるとどうなるだろうか。

新しい仕事を始めようとする場合、そこにはまず、共通の「目的」が存在する。先程の言葉に置き換えれば、共通の「質」である。これが明確になって、初めて人が集まるわけである。そこで次に、集まった人達の間で、仕事を具体化すべく、誰が、いつ、何を、どのくらい、といったことが決められることになる。その際、各自の考えを、数値等といった、誰にでもわかる基準に置き換える作業、即ち「量」の設定が必要となってくる。なかでも、時間的な基準は、通常、「期限」という形で大変重視されている。こうして、仕事がスタートし、最後に「実績」が現れてくるというわけである。

さて、今出てきた「量」「期限」「実績」という三つは、実は「他人」と共通に把握し得る、仕事の客観的側面の鍵となる管理対象である。その証拠に、私達は、組織の中で仕事をする際、常にこの三つの要素を意識しているはずである。しかし、この客観的側面ばかりを重視していたのでは、仕事は、バランスが崩れてうまくいかないというのが、この章のスタートの話であった。仕事が客観的(量的)側面と主観的(質的)側面の二つの面を持つとすれば、前者の「量」的側面だけではなく、後者の「質」的側面にも、注意を払わなければいけないということである。

では、「量」に「質」という、主観的な反対概念があった様に、「期限」や「実績」にも、相対する、主観的側面を担う概念があるのだろうか。

結論からお話ししよう。読者の皆さんにはもうおわかりと思うが、答えは、「ある」のである。具体的に言うと、「期限」には「開始」、「実績」には「目標」が対比概念として存在する。言葉を替えれば、前者は、他人と共同で管理できるものであり、後者は、一人一人にしか管理できないものと言える。

私達は、他人と一緒に仕事をする際、どうしてもこの、客観的な要素が必要となってくるわけで、そのため、私達は、日常において、この「量」「期限」「実績」という三つの要素については大変気を遣っているし、また、労力も費やしているわけである。しかし、これらを本当の意味でうまくマネジメントするためには、その対局にある、「質」「開始」「目標」の部分を、一人一人がもっとうまく、マネジメントする必要があるのである。つまり、両者のバランスが大切だということである。

具体的に言えば、仕事が期限に間に合わないのは、時間がなかったからではなく、開始が遅れたせいであり、実績がよくなかったのは、それに至るプロセス、特に、各作業項目の優先順位の付け方、目標の設定に問題があったからだと弊社では考えている。また、仕事の「質」(目的)がはっきりしないと、適切な「量」の設定ができないし、反対に、「量」的な部分ばかりを重視すると、「質」、即ち、「気持ち・目的」の部分がおろそかになって、ストレスや、生産性の低下の原因となってしまう。この様に、これら六つの概念は、互いに関連しながら存在しており、どれがおろそかになっても、仕事はうまくいかないのである。

そこで、弊社では、これら主観的部分の三要素である「目標」「質」「開始」を生産性向上のキーワードとして捉えている。なぜなら、一人一人がマネジメントすべき「目標」「質」「開始」は、いかなる仕事においても、仕事の着手の段階で発生する問題だからである。


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