四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「目標の設定と質の選択」


生産性向上対策で、目標設定、管理を導入している企業は多い。しかし、それらの多くは、生産性向上とは何であるかとか、そもそも仕事とはどんな構造になっているかとかの本質を見落としているものが多いようである。その結果、目標の設定も単なる期限と量のみでかたられたり、やらなければならない事項の列挙に終始することになっている。そして、期限の到来と共に、目標未達成が待ち構えている。目標未達成だけで済むならいいのだが、実際はそうはいかない。チームメンバーのやる気がなくなったり、リーダーへの信頼感が減少したり、目標設定そのものに疑問を持ったり、(目標は役に立たない、不要だ)が発生する。更に問題なのは、本来、目標の未達成は、企業、組織の存続を危うくするはずであるのだが、目標未達成と同時に倒産した会社というのはあまりお目にかかることはない。これは、極論すればどうでもいい目標だったということではないだろうか。会社の改革、改善を目指して全社で目標設定、管理を導入するのであれば、生産性向上とか、仕事そのものの、もっと根本からのアプローチをすべきではないのだろうか。確かに、目標設定には、専門的、科学的な考え方と手法が存在する。私達は、たかが目標設定と安易に考えてはいないか。ちなみに、入社以来、系統的でかつ、論理的に目標設定及びその管理手法のスキルについて、学習したことのあるビジネスマンはいかほどいるのだろうか。私の判断では、皆無だと思う。なぜなら、生産性向上とか、仕事そのものについて、系統的かつ論理的に説明したマネジメント手法に出会ったことが未だかつてない。目標設定とは、現時点と期待すべき将来をつなぐ架け橋である。現時点を着手とすれば、期待すべき将来は、結果といえる。つまり、着手と結果に整合性を与えるのが、目標設定である。ここで重要なことは、着手は一人一人に任されていることに気づくことである。一方、結果は組織的な課題である。なぜなら、どんな人間でも結果を出すためには、他人の力が必要である。まるっきり一人でやることは不可能である。ましてや、組織的な目標設定においては、なおさらである。構成員一人一人で異なる着手をいかにチーム、組織としての結果につなげるかが重要となる。これを実現するためには、特別なスキルが必要である。一人一人の状況を把握できていること。一人一人の着手と結果を指導できること。一人一人異なる着手と、それによる結果を組織的なものとして束ねることができること等である。これを実現するためのキーポイントが、質の選択である。つまり、理由、目的を明確にすることである。日英のマネジメントスペクトルトレーニングを比較して、一番ショックを受けるのも、実は、この分野である。欧米で目標設定のセッションを行ない、この質の選択を受講者にやってもらうと、実にスムーズにその答えが出て来る。つまり、その仕事を行うにあたっての、自分としての理由、目的は明確に整理されている。しかし、日本でこのセッションをやると、我々コンサルタントは大変苦労する。なかなか、この質の選択ができないのだ。究極の質の選択は、「仕事だから」とか、「社長命令だから」なんて答えが返ってくる。これでは、構成員を束ねることなど絶対不可能である。社長命令であれば、なぜ社長は命令したのか、社長の質の選択、理由と目的をヒアリングすることぐらいしてもいいと思うのだが。

日本のビジネスマンの好きな言葉に、「あ、うん」の呼吸がある。弊社流に解釈すると、お互いに理由・目的が共通認識となった段階で初めて可能となる人間関係ということになる。それ程、この質の選択は、重要な概念である。

また、この質の選択ができて初めて、結果に対する評価も可能となるのである。


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