四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「質の選択と理由・目的」


仕事の質の選択を、従来型の組織主導型のマネジメント手法で行うのは難しい。と言うよりは、殆ど不可能である。この意見には反論も多いと思う。なぜなら、仕事の質を統一するために、製品の品質基準や、業務マニュアルや分掌職務基準があるからである。私達は、その基準によって、仕事を進め、組織としての統一化を目指していると思っている。この考え方は間違いではない。少なくとも成長市場では十分に力を発揮する手法であったと思う。しかし、それが成熟市場でも当てはまるかは、甚だ疑問である。製品の品質という極めて客観的な判断ができるものでさえ、その品質基準を見直さざるを得ない状況に私達はいるのではないだろうか。更に、業務マニュアルや、分掌職務基準は、業務遂行によい影響を与えているのだろうか。果たしてマニュアル通り業務遂行のできる会社は、日本に何社あるのだろうか。

ここで、このマニュアル化(質の統一)が上手にいっているマクドナルドを一つの例として考えてみよう。それにより、マニュアル化が上手にいく仕組みがよくわかる。マクドナルドにマックシェイクという商品がある。これは大変冷たい飲み物で、結構な量もある。この商品を一人で行って注文すると、マニュアル通りに仕事をするためのコツがわかる。一人で行ってマックシェイクを10個注文する。すると必ず、「こちらでお飲みですか。」という質問がくる。当然、一人で10個も飲む人はいないのだが、この質問は、マクドナルドの応対の定番、つまり、マニュアル作業である。このマニュアル応対に腹を立てる偏屈な人はまずいない。「いいえ、持ち帰りです。」と返答すればこと足りるわけだ。しかし、偏屈に考えるとおかしい。一人で10個も飲む人間はいないから、このマニュアル応対はナンセンスだ。そんなことがわからんのかと、腹を立ててもいいことである。お客様である私達の状況を一切無視しているわけであるから、お客様として腹を立てても、何の偏屈でもないはずである。同様に、ファミリーレストランに行って、注文したものが出てこないと、私達はイライラする。ここで、マニュアルの本質が見えてくる。つまり、お客、相手を立腹させずに無視することである。別の表現をすれば、どこまで上手にマイペースを守れるか、マイペースに相手を巻き込むかである。しかし、マクドナルドや一部の業態では、この手法は十分可能であるが、一般的な私達の仕事は、こうはいかない。つまり、相手に大変気を遣って仕事をせざるを得ないのだ。この相手を気遣う能力は、十人十色である。つまり、マンパワーと呼ばれているブラックボックスの一つの大きな要素でもある。では、なぜ十人十色になるのか。そこが問題である。これが解明できれば、ブラックボックスに一つの論理性が導入でき、ブラックボックスではなくなる。

弊社では、これを一人一人の理由、目的に求めることとしている。なぜか、何のためかの把握の仕方の違いが、具体的な行動になって現れてくると考えている。これは、単に接客業務だけに限らず、すべての仕事に当てはまることだと思う。仕事の定性的分野である仕事の質は、この一人一人の理由と目的によって大きく変化するのである。これを強引に組織としての統一的手法で管理することは、一人一人の創造性や、主体性、やる気等を損なう危険性を持っている。であれば、一人一人にこの質の選択が任されているという発想から物事を考え、捉える方が理にかなっているというのが、弊社の考え方でもある。


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