四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「気力・体力と仕事」


仕事を進めるにあたって、一つの典型的なタイプがある。

彼(彼女)は、いつも多忙である。同じ職場にいながら、彼の周りの時計だけが何倍ものスピードでぐるぐる回っている様である。

彼の特徴は、決して「No!」とは言わないことである。いかなる仕事も引き受ける。あたかも「No!」ということが、自分の評価を下げると思っているかの様である。彼はまた、職場内での「ブラック・ホール」でもある。いかなる仕事も彼に吸い寄せられ、彼の手中に入ったが最後、なかなか、場合によっては二度と、他人の前に姿を見せることはない。彼の同僚は、何でも処理する彼を頼もしくも感じているが、彼がいないと彼の仕事は何一つわからず、途方に暮れることもしばしばである。

彼は自分で何でもできる割には、人を使って仕事をするのが大の苦手である。そんな彼の常套句は、「忙しくて面倒なんて見てられないよ。」とか、「期限が迫ってて、オレじゃなきゃ間に合わない。」とか、「説明しているとイライラしてくる!」などである。その結果、彼は全部自分一人でする羽目になり、ますます多忙の日々となるわけである。そんな彼の仕事の処理の仕方は、必殺ワンパターン。つまり、「ダボハゼ」型。目先にあるものを片っ端から処理する仕方である。常に気力、体力を充実させ、前進あるのみ。会議や打ち合わせ中は、他人の話に割り込み、自分の意見が通らないと、「負けた!」と思ったりする。

私もタイムマネジメントのセミナーで、このタイプの彼を受講者として迎え入れることがあるが、今、抱えている仕事を書き出してもらうと、もう沢山の案件が次々に出るわ、出るわとても人間技じゃ処理できないだろうと思うくらいである。更に、それらの仕事に、大事な順番に番号をふってもらう作業をすると、「全部一番」なんて人も出て来る始末。つまり、このタイプの彼は、仕事全部が大事という基本的な回路を持っているのである。全部大事だから、何からやっても、どこからやっても、彼自身としては大差がないし、一つでも多くの仕事を処理することで、達成感も味わえるタイプである。

他人の仕事を深く、深く観察するなんてことをするのは、我々コンサルタントぐらいのもので、職場の上司や同僚、部下はなかなかそこまでしない。だから意外と気がつかれていないが、このタイプの彼は、多忙ではあるが、大事なものと、そうでないものの区別がなく、エネルギーの浪費をしていることが、ちょっと観察するとわかるはずである。そこで、新人研修でも、仕事の進め方において「無駄を省け」と教育する。しかし、無駄を省くためには、何が大事かを知らないとやれない。これ、当たり前のこと。しかし、現実のビジネス社会では、この当たり前のことが行われていないのも現実。

その証拠に、経営者も、管理者も、「無駄を省け。」とは言っても、「大事なことに集中しろ。」とはあまり言わないではないか。

では、なぜ言わないのか?…答えは簡単。指示する人、指導する人が、その相手や部下の「大事なこと」をわかっていないばかりか、自分自身の「大事なこと」もわかっていないからではないだろうか。


0:ホームへ 1:戻る
2:上へ 3:次へ
Copyright (C) : JTIME