四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「質と量」


仕事を分析してみよう。それも、完了した仕事について。

ところで、仕事を分析するにあたって、我々はどんな分析基準をもっているのであろうか。

よく、新人研修等で、「プラン・ドウ・シィ」とか、「ビジネスサイクル」等という言葉を聞かされたことがあると思うが、果たして日常業務の中で、これらをどれだけ実践しているだろうか。一つの仕事が完了した時、ビジネスサイクルにのっとって評価することがあるだろうか。多分、多くの方は、「忙しくて、そんな暇ないよ。」といったところではないだろうか。しかし、「忙しくて暇がない」方達には、暇をつくるためにも、是非一度は、自分のやってきた仕事を見直すことをお勧めする。これは、それだけ価値のある、重要なテーマなのである。

分析・評価の基準には、何だかんだとたくさんあると思うが、弊社では、詰まるところ、基準は二つしかないと考えている。

その一つは「量」であり、もう一つは「質」である。なぜなら、完了した仕事は必ず、この二つの要素から成り立っているからである。更に突っ込んで言えば、客観的に評価ができるのが「量」であり、主観的にしか評価できないのが「質」である。そして、実は、「いかなる仕事も、客観と主観の両面から成り立っている」という、この事実を見落とすと、大変不幸な状態に陥ってしまうのである。

我々のトレーニングコースの受講者に、現在の問題点を聞いてみると、「適正な評価をしてもらっていない。」という人事考課を挙げる方が、非常に多い。管理者の方であれば、皆さん、年に何度かは、この問題で頭を痛めているはずである。客観的に判断ができるもので頭を痛める人は、まずいない。頭を痛めるのは、主観的な判断が必要だからである。しかし、これは仕事の性質上、やむを得ないことだとも言える。なぜなら、仕事そのものが、客観的である「量」と、主観的である「質」の両面から成り立っているからである。

この観点から考えると、前述の二つの典型的なタイプも、一つは量にシフトしているタイプであり、もう一つは、質にシフトしているタイプであると言うことができる。従って、多くのビジネスマンは、この両極の中間をさまよっているのが現実であろう。とは言え、我々は、どちらかと言えば、判断しやすい、客観的にみることのできる「量」を中心に、半ば「質」を置き去りにして、仕事を処理する傾向が強くなっているのではないだろうか。つまり、主観(=自分自身)をどこかに置き去りにして仕事をしているわけであるから、ストレスがたまるのも当たり前ということである。それで結局、そのストレスのせいで力が発揮できなくて、「量」も達成できなくなるという悪循環に陥ってしまうのである。

では、どうしたらいいのか。
知的生産性の向上が結構話題になり、沢山の本や方法論が紹介されているが、どの本を見ても、この問題の解決に、「コレダ!」という妙案は説かれていない。理由は簡単。あまりに当たり前のことをすればいいだけだからである。

では、「当たり前のこと」とは何か。

それは、もっと仕事で関わる人達とのコミュニケーションをとる…ということである。そのためには、まず、仕事が「量」と「質」の二つから成り立っていることを認識することである。繰り返しになるが、「量」は客観であり、「質」は主観である。ビジネスにおいて困難が伴うのも、主観である「質」の部分があるからである。私達は、一人一人違った価値観を持っている。その中で、それぞれ異なる質の調整をすること(=自分の考える「質」を伝え合うこと)こそが、コミュニケーションなのである。

仕事が「量」と「質」の二つから成り立っている以上、どちらにシフトしすぎても、仕事はうまくいかない。とすれば、近年の日本のビジネス社会は、今一度、この量と質のバランスをとる工夫、即ち、コミュニケーションの大切さを認識することが、大切な状況になっているのではないだろうか。


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