四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「市場変化と質の選択」


私達をとりまく市場環境は、明らかに変化したと思う。それは、成長市場から成熟市場への変化と言われている。それが事実かどうかを見極めるには、もう少し時間が必要な気はするが、経済成長率がかつてのような高いものでなくなってきたのは事実である。
この市場の変化は、私達に様々な影響を与え始めている。マクロ的な観点では、様々な出版物で紹介されているので、ここでは割愛する。私見ではあるが、市場変化による影響の具体例は、リストラ、リエンジニアリング、ホワイトカラーの生産性向上、CS等があげられる。沢山の出版物で紹介され、皆さんも既にどれかに関する本はお読みだと思う。

そこで、これらの本では、あまり取り上げられていない、市場変化によるミクロ的な影響を紹介することにする。

成長市場におけるキーワードは、「量」であったように思う。生産量、投下労働時間量、生産効率、新商品供給のテンポ等、数字、つまり、定量的把握が可能な市場であったように思う。例えば、投下労働時間にしても、量が問題となるのは、生産量と投下労働時間の量が正比例の関係にあったからである。しかし、現時点では、この等式は成り立ってはいない。少ない労働時間で、多い労働時間の人や会社より生産量で上回ることは、同業種でも可能である。このことは、生産効率から生産効果の発想転換を私達に迫っているということだろう。つまり、中身が重要になってきたわけだ。成熟市場でのキーワードは、成長市場と対比すると、「質」ということになる。どれだけ上手にやるかとか、何のためにやるかとか、なぜやるかとかの定性的把握が重要な市場である。私の知っているだけでも、大ヒット商品のかなり多くのものが、定量的判断(マーケット分析)では成功が期待できなかったにも関わらず、売り出したらマーケット分析が大外れというものが少なくない。後で冷静に考えれば、それらのヒット商品群は、顧客をうならせる上手な仕掛や仕組みがあったり、売れてから気付く、顧客ニーズをしっかりと備えていたものばかりである。一言で語れば、過去のデータ(定量)に基づく物づくり、発想ではなく、未来を予測する創造性(定性)に基づく物づくり、発想の時代になったということだろう。

ここで、大変重要なことに気付く。定量的な判断ができるものは、おしなべて客観的判断の可能なものである。それに対して、定性的な判断をするものは、全て主観的な判断に基づくということである。客観的判断は、全員の同意とか調和はとりやすいものである。しかし、主観的判断は、その方法では不可能だ。一人一人異なる。しかし、私達は、組織的な動きをせざるを得ない。企業とか会社等において、同意とか調和は、その存在に関わる根本的な課題である。つまり、一人一人の主観的判断を、組織的な同意、調和に結びつける、今までにない新しいマネジメント手法が必要な時代になったということはできないだろうか。

弊社が提唱しているセルフマネジメントは、正しく、この新しいマネジメント手法である。既に、その新しいマネジメントを形成する二つの概念、「優先順位(目標)」と「開始」について語った。本章では、三番目の概念である「質」について語ることとする。

市場変化は、定量から定性へと発想の原点を移すことを私達に要求している。この要求に答える意味でも、質のマネジメントは、避けて通れない課題である。


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