四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「不確実・不透明性と開始」


先が読めない、見えない時代になった。情報量は増大し続け、その伝達スピードは日々早まるばかりである。市場も確実に変化した。過去のことは、確かに今まで以上に読める、見える、わかる時代の様である。にもかかわらず、先のことは一向にわからない、変な時代になったものだと思う。人間として、先が読めない、見えないことくらい恐ろしいことはない。真っ暗闇の中で前に進むのは、不安だし、勇気のいることである。進むスピードは遅くなるし、場合によっては、立ち止まって前に進む気にならないこともしばしば発生する。しかし、真っ暗闇の中にいるのと違って、今の私達は、歩んで来た道だけはしっかりと見ることのできるのが、唯一の救いなのかもしれない。

先の読めない、見えない時代の特色として、私達の仕事の着手は確実に後手後手にまわってしまう傾向があるようである。会社や組織では、様子見ということで、なかなか意思決定はしないし、当然、新規のプロジェクトもスムーズに立ち上がることはできない。私達個人においても同様である。やらなければいけない仕事は山ほどあるが、どれから手をつけたらいいかわからない。結局、期限ギリギリまで先送りしているのが一般的だろう。

昨今のリストラやリエンジニアリング、生産性向上対策で、目標設定と管理をその柱にしている企業が目立つ。しかし、個人も組織も、この着手(開始)が遅れる状況では、成果は望めないだろう。先日も、ある企業から、「目標管理手法を導入したが、一向に成果が出ない。対策はないか。」と相談があった。調査をするまでもなく、その原因と対策はわかるのだが、簡単なヒアリングをした。案の定、答えは明白となった。目標設定の技法と、その管理技法は、完全ではないにしろ身に付けていたが、仕事の開始の技法は欠落していた。成果が出ないのも当たり前で、目標設定はしたものの、それをスタートさせていなかったり、初期の段階でつまずいて、そこでストップしてしまっている状況であった。その原因は、目標以外でやることが多くて、やる時間がないとか、状況が変化するので、設定した目標に自信がないとか、社内、社外を問わず、周りの人間が非協力的だとか、等々であった。これは、どこの会社に行って調査をしても同じである。だから私達は、調査の必要性を認めないのであるが....。

これらの目標を達成するための行動に着手しない様々な理由に、ある一つの共通項といったものを見ることができる。それは、「他人」である。忙しいのは他人のせい。要求が厳しい上司なので、満足させる自信がない。周りの人間が動いてくれない等々である。中には、自分の専門知識が少ないからという人もいるが、非常に稀である。

実は、この「他人のせい」にすることによって、私達は、それでなくとも不確実、不透明な時代なのに、更にその迷宮にはまり込んではいないだろうか。所詮、「他人は他人」。意のままに動かせる方が不思議である。自分を意のままに動かせない人が、他人を意のままに動かすことは不可能だろう。だから、「他人のせい」にする前に、「自分のせい」を考えると、不確実、不透明の迷宮にはまり込むことは少なくなくとも確実に減るはずなのだ。

その具体策として、不確実、不透明な時代ではあるが、少なくとも「自分のこと」、「自分の仕事」の足元ぐらいは、明確にすることができる。明確にしたら、確実にそれを開始させることが、不確実、不透明な分野を確実に減少させることにつながると思うのだが。不確実、不透明な分野の減少は、生産性向上に直結する重要な減少である。


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