四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「事前にわかる仕事とわからない仕事」


仕事には、大きく分けて、二種類の仕事がある。事前にわかる仕事と、わからない仕事である。朝出社し、その日にやるべき仕事を書き出すビジネスマンは多い。書き出せるということは、事前にわかっているということである。しかし、多くのビジネスマンは、書き出すものがその日のうちには、終わらない。少なくとも、定時の就業時間内には終わらない。その原因はいたって簡単である。つまり、事前にわからない仕事は、大変くせ者である。事前にわかる仕事は、それに要する時間も予めわかるものである。しかし、この事前にわからない仕事は、それに要する時間もわからない。つまり、計画の立てようがない、ということになる。

いろいろな企業の管理職の声を聞くと、「自分の部下は、その日暮らしだ。」は結構多い。この、その日暮らしの原因は何かといえば、事前にわからない仕事が主因である。事前にわからない仕事の対処の仕方は、いたって簡単である。つまり、出たとこ勝負ということだろう。その日暮らしということは、この事前にはわからない仕事が発生するのをじっと待って仕事をするスタイルと言っても過言ではない。明日のことは明日でなければわからない、これがその日暮らしの基本的構造である。つまり、事前にわかる仕事も、わからない仕事と同じ進め方で処理するということだろうか。

実は、ここに大きな問題がある。仕事には大きく分けて、二種類の仕事がある。にもかかわらず、大方の人は、一種類の仕事の進め方しか持ち合わせていない。例えて言えば、スキーのノルディック複合競技の様なものだ。同じスキーでの競技だが、ジャンプには幅広のスキー、距離には幅狭のスキーの二種類がある。幅広のジャンプ用の板で距離競技に出る選手はいない。逆も同様だ。それくらい違う。事前にわかる仕事と、わからない仕事も同様なくらい違う。しかし、私達は同じ一本のスキー板で対処している様なものだ。とは言っても、ノルディック複合の選手の方が、ある意味では楽である。なぜなら、距離競技中にジャンプ競技は発生することはない。もし発生すれば、バラエティショーになってしまう。競技が変わる毎にスキー板を履き替えて競技をしていたら、お笑いの世界だ。しかし、我々の仕事は、距離競技中にジャンプ競技をやっている様なものだ。それでいきおい幅広板で距離をやったり、幅狭板でジャンプをやる羽目になってしまう。

つまり、事前にわかる仕事とわからない仕事が交互に不規則にやって来る。この不規則にやって来ることが問題だ。仕事の重点の置き方は、無意識のうちにわからない仕事中心にならざるを得ない。結果、一つのスタイルしかないことになってしまう。ここで当然と諦めるか、それとも諦めずに対処するかで、大きな差が生じることとなる。つまり、わからない仕事中心のスタイルでは、優先順位の発想も、2割8割の法則も不要だということになる。わからないものには、優先順位の付けようがない。そう諦めた瞬間に、啄木現象、生産性低下の落とし穴にはまることとなる。

優先順位の発想や、2割8割の法則を活用するためには、事前にわかる仕事と、わからない仕事が存在することを認識することが必要となる。事前にわかる仕事に優先順位をつけたら、突然発生するわからない仕事の優先順位も付け易い状況をつくることができる。比較をすることができるわけだ。

それともう一つ、このわからない仕事は、仕事における応用編でもある。発生すると同時に、優先順位を判断し、対処に必要な時間を読むことが必要である。このスキルは、事前にわかる仕事を処理するうちに、身につけることのできる応用技術であると認識すべきだ。基礎もやれずにいきなり応用編をやって成功する人は、古今東西、皆無である。


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