四隅の時間で
タイムマネジメント
■マネジメントレクチャー

「仕事の二面性」


前カリュキラムでは、仕事に関わる「人」の、典型的な2つのパターンについて語った。では、これらを弊社流に分析すると一体どうなるのだろうか。

まず、カリュキラム1で述べたタイプは、「量」をこなすことで自分を主張する「量偏重型」と言うことができる。その結果、忙しくなりすぎて、仕事を人に任せられず、日々、仕事に追われているタイプである。

一方、カリュキラム2で述べたタイプは、ひたすら自分のこだわりを追求する「質偏重型」と言える。マイペースで物事を進めながらも、ピントはずれな「質」を追求しすぎて、これまた仕事に追われてしまうタイプである。

さて、多くの場合、私達は、この二つのタイプの間を行ったり来たりしているのが現状である。例えば決算が近づき、多忙な毎日を送っていれば、自ずと前者のタイプにシフトする。一日の中で、時間帯によって変化することもあるだろう。

更に同じことは、一人一人の個人だけでなく、組織においても起きて来る。「量」をこなすことに重点を置くチームや会社もあれば、反対に、「質」を追求することに重点を置くチームや会社もあるといった具合である。

では、どうしてこの様な偏りが起きてしまうのだろうか。
 実は、その答えが、先程の、仕事の定義の中にあるのである。

仕事における「量と質」と聞けば、多くの方は、生産現場(ライン)における「量と質」、即ち、「生産量と品質」を連想することだろう。プロローグの中で、私達は、仕事には必ず「人」が存在することを学んだ。これは、生産現場(ライン)においても、事務現場においても、同様に言えることである。しかし、一方で、生産現場での生産性を考えるのは、事務現場でのそれを考えるより、比較的容易だと言うことができる。なぜなら、そこには必ず、生産ラインやシステムといった、「もの」が存在するからである。どういうことかと言うと、生産現場(ライン)においては、「もの」についての「量と質」を定量的に計測できるシステム(管理手法)が確立しているため、その部分を改善することによって、かなりの生産性向上が達成できるし、されてきたわけであるが、他方、事務現場をみてみると、そこには生産現場における「もの」は存在しない。その代わり、「人」だけが、しっかりと存在しているわけである。「人」は、「もの」と比べると、はるかに流動的であり、且つ、多様である。そのため、事務現場においては、この「人」を定量的に計測できるシステム(管理手法)が確立されておらず、結果、ホワイトカラーの生産性向上についても、なかなか実施施策が出てこなかったわけである。

そこで、仕事の定義に立ち返ってみると、仕事とは、「目標達成のための共同作業」であった。「目標達成」というからには、当然、共通の目標が存在しなければならないし、「共同作業」ということは、必ず、一緒に仕事をする相手と、共通の認識を持っていなければできないことが出てくるわけである。その一例が、先程の、品質をどうするかとか、量をどのくらいにするかといった、誰にでもわかる、客観的な基準の設定である。こうした基準の設定は、「他人」と相対する時、大変重要なプロセスの一つと言える。
一方、仕事をする際には、その仕事をするにあたっての、理由や目的、モチベーションといった、主観的な部分も大変重要になってくる。なぜなら、無意味だと思いながらイヤイヤしている仕事は、ストレスの原因になりかねないし、目的をはき違えた仕事は、結果として、愚にもつかないものになってしまうからである。更に言えば、こうした主観的な部分をしっかりと見つめるということは、取りも直さず、「自分自身」を「主体」として、しっかりと認識するということでもある。

さて、以上のことから、仕事に「人」が存在するということは、仕事自体にも、「人」に特有の、客観的な側面と、主観的な側面の、二つの面が存在するということが言える。つまり、仕事には、誰もが共通に認識できる客観的な側面と、一人一人にしかわからない、主観的な側面が存在しているということである。これを、先程の、「量と質」という言葉に置き換えるなら、事務現場における「量」とは、誰にでもわかる客観的側面の代名詞であり、同じく「質」とは、主観的側面の代名詞と考えることができる。

そして、事務現場には、まさにこの、「人」しか存在しないために、この二つの観点が、どちらも重要になって(表面化して)くるわけである。

そこで、私達は、まず、この客観的な側面に注意をはらい、仕事を共通のものとするべく、何をいつまでに、どのくらいといった形で様々な基準を設定する。

ところがこの、客観的側面ばかりに気をとられていると、主観的な側面が損なわれて、やる気も、モチベーションも無くなって生産性の低下を引き起こしてしまうわけである。この観点から、先程の二つのタイプを振り返ってみれば、一つは他人との関係を重視しすぎて、客観的側面を満たすことばかりに気をとられており、もう一方は、主観的側面を大事にするあまり、一人よがりになって、他の人達との足並みをくずしてしまっていると言える。そしてその結果、どちらも仕事がうまくいかなくなってしまっているわけである。

ということは、この客観的な側面と、主観的な側面の、どちらが欠けても、多すぎても、生産性の低下を引き起こしてしまうということである。

では、この二つのバランスをうまくとるにはどうしたらよいのか。

その具体的なポイントについて、次節で語ることにしたい。


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