<あなたの仕事のスタイルは?> 解説20
皆さんは、自分がどんなスタイルで毎日、仕事をこなしているかを考えてみたことがありますか?
某金融機関に鈴木さん(仮名)という支店長がいます。ある日、彼の仕事ぶりを拝見すると、まず目についたのが、机の書きかけの書類が山と積んであること。朝一番に、鈴木さんは明日の営業担当者との会議に使う報告書にペンを走らせ始めました。「どの仕事から始めるかなんて考えるだけ時間の無駄。考えてる暇なんてないんだから、目についたものからやる」 部下にやらせたらと言うと、「ウチの奴らに任せてたら、満足な書類ができない」と宣う。そうかと思えば、書きかけの書類を置いて営業担当者を呼びつける。「○○自動車工場の融資の件どうなった?」「あれは始めたばかりですから、まだ……」「ヨシ、俺も一緒に行こう」 そう言って、外回りに行ってしまう。帰ってきてからも、○×自動車の融資の提案書を自分で作り始めたり、別の職員が企画書の相談に来れば、「その企画書は俺がやる」と取り上げる。その揚げ句、「次から次と仕事があって、何が何だか訳がわかんない」と嘆く。この鈴木さんのような人を、我が「支店長しよう会」では、Aタイプと称しました。
一方、鈴木さんとはまったく逆のタイプもいます。山田君(仮名)は一種、完璧主義の傾向があり、電話の取り次ぎメモでさえ、日時から相手の名前、用件等々、A4用紙にワープロで打つのです。日報も各種届けもすべてワープロで作成する。そんな彼の作る企画書も、内容は完璧でした。新規プロジェクトの企画書では、我が社、競合他社の事業分析のみならず、他社の抱える問題点、市場の問題点を論じ、ついでにその改善策まで示すという手の込んだもので、感心するとともに、「そこまでするこたあ、ないだろう」と思ったものでした。彼のようなタイプは典型的なBタイプです。
<タイプAの特徴と問題点> 解説21
いずれのタイプに属する人も、おもしろいことに、そのタイプの特有の行動様式を示し、また特有の仕事上の問題点を抱えています。
まずAタイプの人は、競争心が旺盛です。仕事でも遊びでも、何事であれ、人と競わずにはいられない。そのため、他人に対し攻撃的な言動をみせがちです。仕事帰りに居酒屋で一杯やりながら、今年のプロ野球の話に花を咲かせていると、「今年はジャイアンツが強い」などと、自信たっぷりに優勝予想をする人がいるでしょう。それはいいのですが、誰かが「いや、今年はタイガースだ」と言おうものなら、「そんなことはない!」と大声を張り上げ、何としても自説を通そうと、議論を吹っかける。彼にとってはプロ野球の予想も他人との競争であり、自説を通すことは、その勝負に 勝つことを意味する。だから、たかが野球の話でも、他人に対して攻撃的な態度をとってしまう。
こういう人とゴルフに行くと大変です。ワンショット、ワンショットを大切に打とうなどとは考えません。構えるや否やティーショットを打ち、メンバーが打ち終わるのも待たずに勝手に歩き出し、また歩くのも早い。食事も一人、早食いで済ませ、他のメンバーをせかせる。楽しくラウンドしようとか、どうすれば上達するかなどとは考えない。そのくせ、「今日は他の組より多くラウンドできた」と喜び、「○○に3つ負けた」と悔しがる。
このタイプの人は、仕事となると他人に任せることができず、何でも自分で引き受けてしまう。抱え込んだ仕事に優先順位を付けないし、だからスケジューリングもしない。限られた時間で、段取りもなく、ただ闇雲に取り組むため、どこかやっつけ仕事になってしまう。そして、同僚や部下とのコミュニケーションも不足しがちで、チームのメンバーの信頼関係が希薄となり、ひとり孤立がちとなってしまう。そんな問題点を、Aタイプの人は大なり小なり共通して抱えています。
<タイプBの特徴と問題点> 解説22
タイプBの人は、何事にも冷静に取り組み、慌てるということがありません。ゴルフへ行けば、ワンショット、ワンショットにこだわり、一打でもおろそかにはしない。何度も素振りを繰り返し、ゆっくりとアドレスし、少しでも構えが気に入らないと、微調整に時間を費やす。当然、ワンホールを終えるのにも、時間がかかり過ぎます。しかし、次の組が待っているのに気づいているのか、いないのか、急ぐということがない。一方で、メンバーの誰彼となく話しかけて、皆が楽しくラウンドできるようにと気遣うことしきり……。
このBタイプの人が抱える仕事上の問題点とは何か。Bタイプは、どんな仕事でも完璧を期すという傾向にあります。しかし完璧を求めるあまり、ともすれば、やらなくてもいい事、要求されていない事まで追及してしまいがちです。前記の私の部下だった山田君も、あれもこれもといろんなデータやら分析やらを企画書に書き込もうとするあまり、いつになったら完成するのか、見当がつかないということが間々ありました。これでは、ただ自己満足を満たすだけの仕事になってしまいます。先の見通しが立たないから、他の仕事との調整がつかない、仕事の計画が立てられないという悪循環に陥ってしまう。周囲を唸らせる企画書は書けるが、期限内にいくつもの仕事を手際よく仕上げるのは不得手でした。
もちろん、手に余る仕事は部下に頼もうとするのですが、相手に気を遣いすぎて、「いついつまでに必ず」などと、厳しく指示することができず、「時間のあるときに」とか、「できたらやっておいて」などと言ってしまうので、結局は期日までに仕上がらない。「アイツだって忙しいんだから」と、部下の事情を思いやるあまり、ビジネスライクに接することができない。何人もの部下を束ねて動かしていくリーダーとしては、少し困りものです。

<タイムマネジメントのしくみ> 解説23
リーダーしよう研修の内容は、「タイムマネジメントのしくみ」を今までにない切り口で解き明かし、皆様が今よりもワンランク、ツーランクアップした仕事ができるよう企画されています。ところで、この「タイムマネジメント」という言葉は、日本語として何の支障もなく使われています。しかし、その中身となるとどうも曖昧としているようです。
そこで、再度、この「タイムマネジメント」を定義しておこうと思います。
一般的に「タイムマネジメント」は「時間管理」と思われています。しかし、時間は増やすことも減らすこともできません。1日24時間、1年365日は、万人に共通です。差が生じて来るのは、その時間の中で、何をやったかという中身の差です。ビジネスの世界での中身は、仕事そのものということになります。つまり「タイムマネジメント」とは「時間の管理」ではなく「仕事の管理」ということになります。限られた時間の中で、いかに上手に仕事を処理するかの技術といいかえることもできます。
では「仕事」とは何でしょう。この質問の答えは、「タイムマネジメントとは?」以上に十人十色の答えとなるはずです。タイムマネジメントのイメージが曖昧なことの本当の理由はこの「仕事」に対するイメージの曖昧さにあります。
本書では、「仕事は自分と他人の共同作業」と定義し、「仕事のしくみ」をマニュアルのように捉えさせていただきます。限られた時間の中でいかに上手に仕事をするかを実現するためには、仕事のしくみを知ることが大事という考え方です。つまり、「タイムマネジメントのしくみ」とは「仕事のしくみ」といえる訳です。
マニュアルを概観いただき、活用法をイメージしながら、読破下さい。読み終える頃には、確実にランクアップしているはずです。
<ポイントは4つの時間> 解説24
“投下時間”については、すでに言及しましたが、ここで今少し詳しく、考えてみることにしましょう。
投下時間は、ある仕事を始めてから終えるまで、つまり“開始”の時間から“終わり(期限)”の時間までを言います。さらに、開始の時間には“自分ひとりでやる仕事”の開始の時間と、“他人と共同でやる仕事”の開始時間と、2つがあります。終わりの時間も同様に、自分ひとりでやる仕事の終りの時間と、他人と共同でやる仕事の終りの時間の、2つがあります。タイムマネジメントとは、実はこの4つの時間をコントロールすることなのです。
そこで質問です。皆さんは4つの時間をきちんと管理してますか?
スケジュール帳を開いてみて下さい。おそらく「3時、A社のB氏を訪問」というように、他人と共同でやる仕事の開始の時間しか書き込んでいないのでは?
ほとんどのビジネスマンが、4つの時間のうち、たったひとつの時間しかコントロールしていないのです。これでは、自分ひとりの仕事をまったく管理できないのは当然として、会議や商談など、他人と共同でやる仕事を効率良く完遂するのも難しい。
会議の終了の時間が明確でなければ、限られた時間内で満足すべき成果は挙げられません。いつまで経っても何の結論も得られず、ズルズルと会議が長引くだけです。また、会議を効率的に進めるには、会議に必要な資料等の準備をしておかなければなりません。そのためには、やはり自分ひとりでやる仕事の開始と終りの時間をマネジメントしなければならないのです。
しかし現実問題として、4つの時間をすべてマネジメントするのは難しい。ここでは、自分ひとりの仕事の開始時間のマネジメントを心掛けて下さいと、言っておきましょう。何故、その開始の時間が重要なのかは、この後の節で詳しく説明します。

<仕事の棚卸し> 解説25
仕事の棚卸は、プランニングの前提ともなる作業です。
皆さんは、自分が今、いくつの仕事を抱えているかを、明確に把握していますか。特に重要ないくつかの仕事については、「いつも頭から離れない」という状態で、把握してはいるでしょう。支店長しよう研修でも、すべてを即座に言える人はまずいない。“事前にわかる仕事”が把握できていない状態では、“突発的に生じる仕事”に適確に対応できるはずがない。
仕事の棚卸とは、頭の中で記憶しているだけではなく、仕事のすべてを書き出し、記録することです。これによって、それぞれの仕事の期限、内容、優先順位、投下時間を明確に把握できるようになります。それができれば、次の段階に進むことも容易でしょう。何から始めなければならないのか、どの仕事を誰に委任すればいいのか、それが決定できるのです。すなわち、今すぐ自分でやる仕事(A)、後で自分でやる仕事(B)、他人でもいい仕事(C)に、仕事を仕分けすることができる。
ほとんどの人は、これを頭の中でやっているのですが、それで本当にすべての仕事を管理できているでしょうか。残念なことに、記憶だけでは、必ず抜け落ちてしまうものです。さらに、仕事を委任した職員の、仕事への意識を明確にさせるためにも、記録に残すことが有効です。何より、突発の仕事が生じた時、頭の中だけで管理しているだけでは、優先順位などが、必ず混乱してしまいます。
ただ、間違えないでほしいのは、仕事の内容と目的を混同しないこと。企業コンサルティングをする際、実際に棚卸をしてもらうと、「営業成績の向上」「部下の教育」などと列記する人が意外に多いのです。「営業成績の向上」は仕事の目的であり、そのために行う「顧客訪問」や「営業会議」などが、リストアップする仕事なのです。
<優先順位が見えない?!> 解説26
いくつもの仕事を抱え、限られた時間の中で成果を上げるには、仕事に優先順位を付けなければならないのは、論を待たない。
支店長しよう会では、優先順位の手法として、「パレートの法則」の適用を提案していました。19世紀、イタリアの社会経済学者、パレートは、一国の富の8割を、その国の上位2割の資産家が保有していることを発見したのですが、この法則はビジネスにも応用できるのです。
皆さんも、かなりの数の仕事を抱えているはず。そのすべてをリストアップし、次いでそのうち重要な2割の仕事を選択し、それを完遂することで、すべての仕事を達成した時に得られる成果の8割を、得ることができるのです。
ただ、困ってしまうのは、仕事そのものと、仕事の目的を取り違える人が多いこと。支店長研修の時に「あなたがしている仕事の中で最も重要なものは?」と質問したら、「支店業績の拡大です」と答えた人がいました。業績の拡大は仕事の目的であり、「仕事」ではない。これでは、優先順位が混乱してしまいます。
皆さんお仕事で、優先順位の手法を導入しているところは多いでしょう。では、満足できる成果はあがっていますか?
今回のマニュアル作成作業の調査からも、優先順位の手法がうまく機能しない最大の理由は、「何が重要か」と、「何からやるか」が一致しない、あるいは一致させられないことです。優先順位の高い、重要な仕事というのは、往々にして難しい仕事が多い。重要だが難しい仕事と、さして重要ではないが楽にこなせる仕事が今、目の前にあったら、どちらから手をつけますか。前者をまずやる、という人は、タイムマネジメントができている人です。しかし人間というのは、楽な仕事から始めて、重要な仕事を後回しにしがちです。

<仕事への先見性アップ> 解説27
仕事を優先順位で区分すると、AとB、C、AX、BX、CXの6つがあります。このうち、生産性の向上に最も大きく寄与するのが、BおよびBXの“後で自分でやる仕事”です。そして、すでに紹介した“自分へのアポイント”で、時間を確保しておかなければならないのが、この2つの仕事です。
それでは、どの程度の期間を、自分へのアポイントの対象とすればいいのか。それは、皆さんの、現在の仕事のスタイルによって異なります。スケジュール帳に“自分一人でやる仕事”が、どれくらい先まで書き込まれているのかを、チェックして下さい。2〜3日先までしか書かれていないなら、「今」はその2〜3日になります。また、その状態では、仕事の優先順位や投下時間を把握できるのは、1週間くらいが限度でしょう。つまり、2〜3日以降、1週間までが「後」になります。
どれくらい先まで、自分へのアポイントができているのか。それは、皆さんが仕事の先行きをどれくらい見通せているかを表すものです。すなわち、先見性の指標なのです。自分へのアポイントが1週間までできているなら、先見性は1週間ですし、2週間先まで自分へのアポイントができているなら、先見性は2週間ということです。当然、先見性があるほど、より生産性の向上が期待できることになります。
もし、現在の先見性が1週間なら、それを2週間にするようトライして下さい。それができたら、次は3週間。4週間先まで、Bの仕事の優先順位、投下時間を把握できるようになったら、あなたはもうビジネスマンとしては一流です。
ただ、それ以上先まで具体的な業務名を書き込むのは、困難でしょう。無理に仕事を書き込むのではなく、これから生じるであろうBの仕事のための時間を、確保するにとどめて下さい。
<自分へのアポイント> 解説28
本マニュアルでは再三、仕事を効率的に進めるには“自分”と”他人”のバランスが大切だと説いてきましたが、ビジネスの現場で実際に行われているスケジュール管理では、そのバランスがいびつになってしまうのです。これを改善するために、ぜひとも実行すべきなのが、“自分ひとりでやる仕事”の開始の時間をマネジメントすること。
この時間を自分でコントロールできれば、自分ひとりでやる仕事だけではなく、他人と共同でやる仕事をも、容易にコントロールできるようになるのです。その結果、自分の思う通りに仕事をやり遂げたという実感を得ることができるでしょうし、仕事へのやりがいも生まれます。逆にこの時間がマネジメントできなければ、仕事の達成感や、やりがいなど、生まれるはずがないのです。
問題は、どうすれば自分ひとりでやる仕事の開始の時間をマネジメントできるのか、ということです。本マニュアルが提案しているのは、“自分へのアポイント”です。これは、1日の時間のうち、あらかじめ自分ひとりでやる仕事の投下時間を確保することです。そのため、スケジュール帳にその時間を書き込んでおくこと。これが自分へのアポイントです。
アポイントを入れるべき仕事は、優先順位の項で説明した、“後で自分でやる仕事”です。生産性向上に寄与する可能性の大きな仕事ですから、この時間は他の仕事によって邪魔されないよう、最大限の努力をして下さい。“突発的の仕事で、今時分がやる仕事”が生じた時だけ、どちらを優先すべきかを考え、それ以外の仕事はすべてシャットアウトして下さい。例えば、この時間だけは別室に籠り、自分宛の電話には居留守を使うぐらいのことをしてもいいでしょう。
スケジュール帳は、“他人”のためにあるのではない、“自分”のためにあることを忘れないで下さい。
<生産性向上のポイントは「仕事の開始」> 解説29
すでに説明した4つの時間のうち、皆さんはどの時間を管理していますか?
“他人と共同でやる仕事”の開始の時間は、「10時から会議」などと、誰でも手帳に記入して管理しているはずです。“自分ひとりでやる仕事”の期限については、「あの企画書の提出期限はいついつまでだな」というように、頭にインプットしているだけで、きちんと管理できているかどうかは、心もとない。
これでは、自分で自分の仕事をコントロールするのは不可能なのです。むしろ、“他人”に振り回されて仕事をしている状態です。例えば、会議の終了の時間がマネジメントされていなければ、会議が長引くのは当たり前。必然的にその後に予定している、自分ひとりでやる仕事に費やすはずの時間が、犠牲になってしまう(その後の予定が他人と共同でやる仕事の場合は、会議を予定通りの時間で切り上げるような努力がなされるはずだし、それでも終わらなければ、途中で打ち切る、席をはずすなどで対応するでしょう)。
また、企画書の作成を始める時間がマネジメントされていなければ、その開始の時間は先延ばしにされ、結局は期限が迫って慌てて始めることになりかねない。企画書の提出期限とは、提出相手の都合に左右されるものです。いずれの場合も、他人に仕事をやらされているようなものです。
自分ひとりでやる仕事の開始の時間は、他人の干渉を受けずに、自分だけで決定できる、唯一の時間なのです。さらに言えば、自分でコントロールできなければ、完全にルーズになってしまう時間なのです。期限の間際に慌てて仕事を始めるのでは、他人に振り回されて仕事をしているようなものです。自分と他人のバランスが崩れている状態であり、この状態では生産性の向上など望めません。バランスを修正するためにやるべきことは、自分ひとりでやる仕事の開始の時間をきちんとコントロールすることです。

<事前にわかる仕事と突発の仕事> 解説30
前に「すべての仕事をグループ分けして下さい」と書きました。もちろん皆さんは「すべて」を挙げたつもりでしょう。しかし、それ以外にも、皆さんがやらざるを得ない仕事が存在するのを、お気付きですか。
毎日、その日のうちに終えられる心づもりで仕事の予定をたてるのに、実際にはいつも残業を余儀無くされるという人は多いはず。何故、こんなことになるのでしょう?
あるいは、予定していた仕事を、「後で落ち着いてやろう」などと考えて、残業したり、休日出勤することもあるはず。休日出勤だと、何故落ち着いてできるのでしょう?
おそらくその答えは「邪魔が入るからさ」「休日なら邪魔されずにすむ」というものでしょう。突然、お客さんから寄せられるクレームの電話への対応、本部から突然、言い付けられる仕事、これらが予定していた仕事の邪魔をしてしまう。つまり、皆さんが毎日、こなしている仕事は、“事前にわかる仕事”だけでなく、“突発的に生じる仕事”もあるのです。生産性向上のためには、事前にわかる仕事が、突発の仕事によって阻害される度合いを軽減しなければならないのです。
突発の仕事は、いつ起きるか、どんな仕事かもわからないんだから、対処のしようがない――そんな諦めの気持ちを持つのは間違いです。実は、事前にわかる仕事をきちんと把握していれば、突発の仕事が生じても、1日の予定は混乱せずにすむのです。
突発の仕事が生じた時、まず判断すべきは、そのとき手掛けていた仕事(事前にわかる仕事)と突発の仕事の優先度です。当然、いずれか高い方を選択します。優先度が同じなら、投下時間によっていずれを優先すべきか、決まります。つまり大切なのは、事前にわかる仕事の優先度、投下時間を把握しているか、どうかなのです。事前にわかる仕事を適確に把握できる人なら、突発の仕事も、瞬時に優先度、投下時間を把握できるはずです。

<仕事の段取り> 解説31
うまく仕事の段取りができるかどうか。これは、生産性の優劣を分けるカギともなる、重要なスキルですが、しかしコツさえ身に付ければ、何も難しいことではない。次に挙げる3つのステップを覚えるだけです。
 まず1つめのステップは、生産性の方程式の3つの要素、投下時間と質、量を、きちんと把握すること。投下時間は、その仕事を完了するのに必要な時間、その仕事のために使える時間です。また、質と量は、その仕事を何のためにやるのか、どうしてやらなければならないのか、その目的・理由によって自ずと決まるはずです。
この3つの要素を把握していないと、その仕事を遂行するために、具体的に何をどうやって進めたらいいのかわからない。いわば行動計画が明確にできないのです。それでいながら、実際に多くの人が、この基本のステップを飛び越して、仕事の段取りをしているはずです。その結果、やらなければならないことが抜け落ち、例えば行くべきお客さんを見落としたり、訪問する前にやるべき準備をしなかったりということにもなる。逆に、やらなくてもいいことに時間を費やすことにもなりかねない。これでは生産性の向上は望めません。
そして2つめのステップは、仕事を遂行するために必要な行動を列挙し、さらにひとつひとつの行動について、誰がするのかを決定することです。つまり、自分がやるのか、他人に任せるのか、すべての行動に人を張り付けるという作業をやることになります。
そして3つめのステップが、列挙した行動に順番を付けること。何から始めるべきかは、仕事の投下時間と質、量が把握できていれば、自ずと決定されるべきことです。逆に3つの要素が把握できていないと、思い付くままにアレをやり、コレをやりという、甚だ生産性の低いスタイルで仕事をせざるを得なくなるのです。

<タイムマネジメント的問題解決法> 解説32
企業のトレーニングコースやコンサルティング活動で、必ず設けるセッション、調査があります。それは、「今のあなたの仕事をすすめる上での問題点は何ですか?」という質問とその解決策のワークショップ(質疑応答)です。
「上司の指示が不適切」「支持どおり動かない、動けない部下」「突発の仕事が多すぎ」「顧客、営業先がない!」など様々な問題が噴出します。そして私は、必ず次の質問をすることにしています。「問題が全くなくなることはありますか?」これに対する皆さんの答えは、たった一つです。「そんなことは絶対ありえません。いつも何らかの問題が存在します!」です。
つまり、私達の仕事は、常に何らかの問題(自分にとって都合の悪いこと)と共にあるという現実です。
ですから、問題を解決しようと努力して、取組むと大変疲れます。また問題が生じることがわかっていますから…。
そこで、マニュアルをご覧下さい。マニュアルの図は、問題を解決するというより、問題と上手に付き合うという発想です。
問題が問題たる所以は、その問題により私達は何らかのダメージ(時間だったり、お金だったり、気持ちだったり)を受けるということです。
そこで解決の方法は三つあります。ダメージが「0」となるよう対処するか、ダメージが少しでも減るように対処するか、あきらめて何もしないかの三つです。
マニュアルの図は、ダメージを「0」にするのではなく、少しでもダメージを受けないようにするための対策を図解にしたものです。
この方法を取る時、はじめて、優先順位の重要さもわかりますし、やってはいけないこと、すぐやるべきこともわかってきます。