3-1.ワークスタイルと仕事の進め方の問題点
   ポイント
     ・ 個人のワークスタイルは、右図の様な傾向がある

     ・ その時々の状況によって、タイプAかタイプBに揺れ動く
1.ワークスタイルは、大きく分けて2種類ある。
2.「量」を優先するのは、Aタイプ。
  「質」を優先するのは、Bタイプ。
3.自己評価でどちらの傾向が強いか把握することが大事。
  (状況に応じてどちらかのタイプに揺れ動く)
質と量のバランスが崩れるとパフォーマンス・リソーセスが悪化する
バランスが大事
  チャート図16




              
               
  関連セクション
<あなたの仕事のスタイルは?!>

 
 皆さんは、自分がどんなスタイルで毎日、仕事をこなしているかを考えてみたことがありますか?
 私が今、コンサルティングをしている某金融機関に鈴木さん(仮名)という支店長がいます。ある日、彼の仕事ぶりを拝見すると、まず目についたのが、机の書きかけの書類が山と積んであること。朝一番に、鈴木さんは明日の営業担当者との会議に使う報告書にペンを走らせ始めました。
 「どの仕事から始めるかなんて考えるだけ時間の無駄。考えてる暇なんてないんだから、目についたものからやる」
 部下にやらせたらと言うと、「ウチの奴らに任せてたら、満足な書類ができない」と宣う。そうかと思えば、書きかけの書類を置いて営業担当者を呼びつける。
 「○○自動車工場の融資の件どうなった?」「あれは始めたばかりですから、まだ……」「ヨシ、俺も一緒に行こう」
 そう言って、外回りに行ってしまう。帰ってきてからも、○×自動車の融資の提案書を自分で作り始めたり、別の職員が企画書の相談に来れば、「その企画書は俺がやる」と取り上げる。その揚げ句、「次から次と仕事があって、何が何だか訳がわかんない」と嘆く。この鈴木さんのような人を、我が「仕事の科学研究会」では、Aタイプと称しています。
 一方、私のサラリーマン時代の部下、山田君(仮名)は一種、完璧主義の傾向があり、電話の取り次ぎメモでさえ、日時から相手の名前、用件等々、A4用紙にワープロで打つのです。日報も各種届けもすべてワープロで作成する。そんな彼の作る企画書も、内容は完璧でした。新規プロジェクトの企画書では、我が社、競合他社の事業分析のみならず、他社の抱える問題点、市場の問題点を論じ、ついでにその改善策まで示すという手の込んだもので、感心するとともに、「そこまでする庫たあ、ないだろう」と思ったものでした。彼のようなタイプは典型的なBタイプです。
 

<タイプAの特徴と問題点>

 
 いずれのタイプに属する人も、おもしろいことに、そのタイプの特有の行動様式を示し、また特有の仕事上の問題点を抱えています。
 まずAタイプの人は、競争心が旺盛です。仕事でも遊びでも、何事であれ、人と競わずにはいられない。そのため、他人に対し攻撃的な言動をみせがちです。仕事帰りに居酒屋で一杯やりながら、今年のプロ野球の話に花を咲かせていると、「今年はジャイアンツが強い」などと、自信たっぷりに優勝予想をする人がいるでしょう。それはいいのですが、誰かが「いや、今年はタイガースだ」と言おうものなら、「そんなことはない!」と大声を張り上げ、何としても自説を通そうと、議論を吹っかける。彼にとってはプロ野球の予想も他人との競争であり、自説を通すことは、その勝負に勝つことを意味する。だから、たかが野球の話でも、他人に対して攻撃的な態度をとってしまう。
 こういう人とゴルフに行くと大変です。ワンショット、ワンショットを大切に打とうなどとは考えません。構えるや否やティーショットを打ち、メンバーが打ち終わるのも待たずに勝手に歩き出し、また歩くのも早い。食事も一人、早食いで済ませ、他のメンバーをせかせる。楽しくラウンドしようとか、どうすれば上達するかなどとは考えない。そのくせ、「今日は他の組より多くラウンドできた」と喜び、「○○に3つ負けた」と悔しがる。
 このタイプの人は、仕事となると他人に任せることができず、何でも自分で引き受けてしまう。抱え込んだ仕事に優先順位を付けないし、だからスケジューリングもしない。限られた時間で、段取りもなく、ただ闇雲に取り組むため、どこかやっつけ仕事になってしまう。そして、同僚や部下とのコミュニケーションも不足しがちで、チームのメンバーの信頼関係が希薄となり、ひとり孤立がちとなってしまう。そんな問題点を、Aタイプの人は大なり小なり共通して抱えています。
 

<タイプBの特徴と問題点>

 
 タイプBの人は、何事にも冷静に取り組み、慌てるということがありません。ゴルフへ行けば、ワンショット、ワンショットにこだわり、一打でもおろそかにはしない。何度も素振りを繰り返し、ゆっくりとアドレスし、少しでも構えが気に入らないと、微調整に時間を費やす。当然、ワンホールを終えるのにも、時間がかかり過ぎます。しかし、次の組が待っているのに気づいているのか、いないのか、急ぐということがない。一方で、メンバーの誰彼となく話しかけて、皆が楽しくラウンドできるようにと気遣うことしきり……
 このBタイプの人が抱える仕事上の問題点とは何か。Bタイプは、どんな仕事でも完璧を期すという傾向にあります。しかし完璧を求めるあまり、ともすれば、やらなくてもいい事、要求されていない事まで追及してしまいがちです。前記の私の部下だった山田君も、あれもこれもといろんなデータやら分析やらを企画書に書き込もうとするあまり、いつになったら完成するのか、見当がつかないということが間々ありました。これでは、ただ自己満足を満たすだけの仕事になってしまいます。先の見通しが立たないから、他の仕事との調整がつかない、仕事の計画が立てられないという悪循環に陥ってしまう。周囲を唸らせる企画書は書けるが、期限内にいくつもの仕事を手際よく仕上げるのは不得手でした。
 もちろん、手に余る仕事は部下に頼もうとするのですが、相手に気を遣いすぎて、「いついつまでに必ず」などと、厳しく指示することができず、「時間のあるときに」とか、「できたらやっておいて」などと言ってしまうので、結局は期日までに仕上がらない。「アイツだって忙しいんだから」と、部下の事情を思いやるあまり、ビジネスライクに接することができない。何人もの部下を束ねて動かしていくリーダーとしては、少し困りものです。前記の自己診断でBタイプとなった読者の方も、心当たりがあるのでは?