2-4.音声コミュニケーションモデルと文字コミュニケーションモデル
   ポイント
     ・ 音声はニュアンス、文字は事実

     ・ 音声は記憶、文字は記録
1.視覚コミュニケーションもある。
2.視覚→音声→文字と変化するにつれて、論理性が向上する。
3.逆向きは感性が向上する。
感性は個人差が顕著
本マニュアルは論理に焦点
            感性は各自で   論理は本マニュアルでトレーニング
  チャート図11



         
               
  関連セクション
<4つの基本スキル>

 
 皆さんは、他人とコミュニケーションをとろうとする際、4つのスキルを使っているはずです。すなわち、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つです。
 ちなみに、4つのスキルの中で最も易しいスキルが「聞く」であり、次いで「話す」「読む」と続き、最も難しいのが「書く」です。これは、我々が生を受けてから、どんな順番で4つのスキルを身に付けたのかを考えてみれば、容易に理解できるでしょう。最初に「書く」ことを修得した人はいないはず。まず言葉を覚え、成長するにつれ、言葉を話すようになり、文字を覚え、最後に文章での表現ができるようになったはずです。
 ところで、ビジネスの現場で4つのスキルが、それぞれどんな頻度で使われているのか、皆さんは御存じですか。仕事の科学研究会のデータでは、平均値として、ひとりのビジネスマンが1日に行なうコミュニケーションの中で、「聞く」を使っている時間が45%、「話す」が30%、「読む」が15%、「書く」が10%となっています。
 つまり、皆さんは最も易しい2つのスキルによって、コミュニケーションの大半を行っているのです。本来は、情報の種類によって、それぞれ伝えやすいスキルもあれば、伝えにくいスキルもあるのですが、その使い分けができていないというのが、現状です。
 さらに言えば、「阿吽の呼吸」という習慣の残る日本のビジネスマンは、一般的にコミュニケーションのスキルが未熟です。このスキルは、チーム・コントロールの要となるものですから、このスキルが身に付いてるかどうかが、管理職としての優劣を左右すると言っても、過言ではありません。ところが、「聞く」に長けてる管理職は少なく、「話す」に長けてる管理職は、さらに少ない。
 管理職ともなれば、コミュニケーション・スキルを磨く努力をしてほしいものです。その要点が、マニュアルに挙げたゴールデン・ルールです。

<音声情報と文字情報>

 
 4つのコミュニケーション・スキルのうち、「聞く」と「話す」の2つでやり取りされるのが音声情報で、「読むと」と「書く」で伝えられるのが文字情報です。
 実際のビジネスの現場においては、会議や打ち合わせ、電話連絡、ボイスメールでのメッセージなどで交わされているのが、音声情報です。また、報告書や決算書などの各種資料や、Eメールで伝えられるのが文字情報です。ちなみに、皆さんが毎日やり取りしている情報のうち、75%が音声情報ですし、25%が文字情報です。。
 音声情報は「記憶性」が高く、文字情報は「記録性」が高いという違いがあります。目に見える形で残される文字情報の記録性が高いのは、いわば当然です。一方、音声情報は記憶性が高いというのは、言葉だけではなく、ニュアンスをも伝えるからです。例えば、支店長が会議の場で「当支店の今月の実績は、◯◯だった」と言う時、言外のニュアンスが情報の受け手に伝わるのです。「支店長は怒っているようだ」「支店長は喜んでいるぞ」という、言外の情報が受け手の記憶に訴えかけるのです。
 また、良好なコミュニケーションを実現するためには、発信者の主観的な思いや考えと、客観的な数字や事実という、2つの要素を伝えなければならないと、すでに説明しましたが、音声情報は主観を、文字情報は客観を伝えやすいという、それぞれの特徴があります。ですから、会議や打ち合わせの時に、音声情報を伝えるだけでは、客観的な要素が伝わりにくいのです。「会議でメンバー全員の共通認識ができたと思っていたのに、いざ行動してみると、方針が徹底されていなかった」などという事態が生じてしまうのも、音声情報だけに頼ってしまっていることに一因があるのです。音声だけじゃなく、資料やパワーポイントを利用するなど、いわばマルチメディアでコミュニケーションを行えるような、環境づくりも大切なことです。