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日本タイムマネジメント普及協会
企業変革概論
 
中世型マネジメントから科学的マネジメントへ・・・
「次世紀につながる企業変革概論」
       −満ち足りた個人と豊かな社会のための方程式−

 

1.はじめに

今は、21世紀の初頭ですが、本論は次世紀である22世紀につながるための礎として、企業が今後取組んだほうが良いと著者が感じていること、考えたことをまとめたものです。
ひょんなきっかけでやることになったタイム・セルフマネジメント専門のコンサルタント業務も丸20年が過ぎました。本論は、この間、指導させていただいたこと、考えたことをまとめてあります。タイム・セルフマネジメント専門のコンサルタントという立場上、従来の組織論的なアプローチによる論の展開にはなっていません。一人一人の個人がどう仕事に対処するかということを発展させて、「企業はこうした方が良いのでは?」という展開になっています。いわばマクロからのアプローチではなく、ミクロからのアプローチが従来から難問とされているホワイトカラーの生産性向上や、閉塞的な企業経営を一気に打開する唯一の方法だと確信し、本論をまとめる決意をしました。

もう一方で、本論をまとめる決意をさせたのは、「経済学」「経営学」の現状です。そもそも経済学の学問としての目的は、市場のメカニズムを解明することでなく、いかに豊かな社会を構築するかにあると私は思っています。しかし、私の知るかぎり、現在の経済学は、本来の目的を忘れ、技術論に終始しているように感じます。いろいろな物は、たくさんあるが、ちっとも幸せ、豊かな気分になれない社会というのは、どこかが間違っているのだろうと思います。今の経済学は、この社会を豊かにするということに全く寄与していないように感じるわけです。
同様に、経営学についても、本来の目的は、組織とその組織の構成員を豊かにするための学問だと私は思っていますが、現状は、これとは、随分とかけ離れたところにあるように思います。潜在的なうつ病患者が国民の30%を超えるとか、交通事故死の3倍の自殺者がいるという企業・組織や社会は、大きな問題です。既存の経済学や経営学がこの問題を解決できないのであれば、ミクロ的なアプローチで、いくつかの企業で成果をあげてきた、私の理論、ノウハウの普及が遠まわりかもしれませんが、満ち足りた個人と豊かな社会をつくることに貢献できるのではとも思いました。
本論を展開するにあたっては、「両極併存」というものの捉え方、考え方を採用させていただきました。両極併存とは対極にあることが同時に存在するということです。例えば、コインの裏と表。電気の+と−、磁石のN極とS極といった具合です。全て片方だけでは成り立ちません。本論のテーマである「企業変革」を考える時、企業活動で行なわれる全ての業務(仕事)を、科学的に捉える必要があります。その際、その対象である業務(仕事)は、実施する人、実施する時間、実施する方法などにより成果に大きな差が生じるだけでなく、外部環境(経済動向、市場動向など)によっても、異なる結果となります。これは、変化する要因(変数)が無限大にある状況だという事です。つまり、私たちの仕事は複雑系といえます。この変数が無限大に広がるので、具体的な対応策も都度考えねばならず、ホワイトカラーの生産性向上や、企業変革は難しいとされて来たわけです。本論では、その複雑系である仕事を、単純明快に捉える為に、「両極併存」という考え方を導入しました。
これにより、従来は、見えなかった仕事の様々な側面が明確になると同時に、その対応策のみならず、望ましい企業のあり方(運営のしかた)すら導くことができました。

本論により、一人でも多くの方が、満ち足りた社会生活を実現でき、一社でも多く社会に豊かさを伝える企業が増えることを念じております。


 

2.情報化・IT化社会がもたらした企業変革の必要性

情報化社会、社会のIT化が企業に、運営方法のみならず、その形態までも変えるよう働きかける一番の力になっていることは異論がないと思います。これを考える前に、歴史をさかのぼって、情報化社会についてざっと考えてみたいと思います。
私は、今だけが情報化社会だとは思っていません。歴史をさかのぼると、過去にも何度か情報化社会と呼んでもいいような時代や出来事が繰り返されて来たように思います。
人類が最初に言葉を覚えたときが情報化社会のスタートだったと思います。次に文字を開発したときも、紙を発明した時も、印刷技術を開発した時も、私たちの社会は、質・量ともに確実な進歩をとげて来たと思います。
これらのコミュニケーションに関わる情報化が高度化する度に、人類は飛躍的な進歩と便利で豊かな社会を築いてきました。そして、これらの出来事のあと、人類社会は新たな社会制度を構築して来たわけです。
今回のITに関わる情報化も、過去の例にならって飛躍的な社会生活の進歩と、社会制度の変革につながる可能性は十分にあると思います。
しかし、一方では危惧すべきことも生じています。それは、今までの情報化時代は、言葉や文字、紙、印刷技術などの便利な道具を活用し豊かな社会を築くための知恵が先人にはありました。しかし、今回の情報化時代において一番欠落しているのは、便利な道具を活用し豊かさを実現する知恵のような気がします。今回の情報化は、伝達のスピードも飛躍的に早く、そればかりか伝達できる量も質も今までの情報化時代のものとは比較ができません。その結果、現代人に一番欠乏しているのは、知恵を働かせるための考える時間ということになっているように思います。この事例は、ビジネス現場をウォッチするとたくさん発見することができます。社内IT化が終わっても業績が良くならない現実に悩む経営者がいたり、一日に何十通、何百通と飛び込んで来るメールの処理に きゅうきゅうとしているビジネスマンがいたりなど、便利な道具はあるが、一向に豊かにならない現実があります。
そして、このような現実は、人類を進歩させるどころか、逆に退化、後退させるようなことにつながる事例も多々出てきました。 21世紀にもかかわらず、情報化により後退した企業や個人は、中世まがいのマネジメント(科学的でないという意味)を知らず知らずのうちに導入する羽目にもなってしまっています。
その一つがピラミッド型組織とフラット型組織です。ピラミッド型組織は経営学が確立して以来、組織論の定番だったと思います。しかし、今回の情報化時代において企業内で悪者の一つにされてしまいました。私はこれを中世型マネジメントの一例として取上げたいと思います。企業業績が悪いのは、多階層による風通しの悪さが原因だということで、中間管理職不要論やリストラ対象のターゲットにされるというところまで行きました。そして、その結果は吉と出たかというとそうではありません。凶です。リストラされた側も残った側も幸せになれなかったばかりか、企業業績が劇的に改善されることにもなりませんでした。理由は簡単です。仕事を科学的に捉えていなかったからです。正しく中世型マネジメントです。
では、21世紀型マネジメント(仕事を科学的に捉える)手法で考えてみましょう。仕事は、新入社員から社長にいたるまで、たった二つの仕事しかしていません。それは、「自分一人でやる仕事」と対極にある「他人と共同でやる仕事」の二つです。これ以外の仕事はありません。そして、前者はデスクワークなど「業務処理」と呼べるもので、後者は会議、打合せなどコミュニケーションがらみの「情報処理」と呼べるものです。そして、これは10年前に私が調査したデータですが、この二つの仕事の比率は、業種、業態、規模に関わりなく概ね4:6で「情報処理」の方が多いのです。ここ数年、様々な企業で指導し、この比率は10年前と比較し、「情報処理」の方が増えている感があります。
ここで、この考え方によって、ピラミッド型組織をみると、この組織は、「業務処理」をするために開発された組織であるということです。「業務処理」をするための器に、大量の「情報処理」をさせようとしたことに大きな問題があるのであって、「業務処理」をするためのピラミッド型組織には何ら悪いところはないというのが私の見解です。
そして、ピラミッド型組織の対極にあるのがフラット型組織ですが、この組織は「情報処理」には適していますが、「業務処理」には不向きな組織だと思います。トップの意向がダイレクトに現場に伝わるのがフラット型組織の一番のメリットです。しかし、ピラミッド型組織からフラット型組織に移行した多くの企業で、成果に結びついていない一番の理由は、このフラット型組織のメリットを活かしていないということです。ここでも中世型マネジメントが幅をきかす結果となっています。フラット型組織になったもののトップの意向がわからないという現場の声は多く耳にします。つまり、形は変えたが中味は変わらず旧態依然のままということです。フラット型を採用したら、今まで以上にトップは情報発信をしなければなりません。そうしないとフラット型のメリットを引き出すことができないからです。

フラット型組織とピラミッド型組織についての参考文献 「最強の時間力」P139
ここで一つの事例を紹介しましょう。
ある金融機関の若手の得意先の担当者のヒアリングをした時のことです。「今困っていること、悩んでいることはある?」の質問にすかさず「頭取が年初に発表された、方針・目標と私の日々の仕事がどう結びついているかがわからず、やる気の出ないことです。」との返答がありました。この事例は、若手はやる気がないとか、責任感に欠けると批判する前に、トップは、良く良く末端まで方針・目標を伝え切らないと、せっかくの戦力も戦力になり切れない典型的な事例だと思います。
フラット型の組織にしても、その組織の持つメリットを活かす知恵が欠落する時、その組織はゴミどころか、人間を不幸にする道具に早変わりするということを肝に命ずる必要があります。
さて、ピラミッド型組織とフラット型組織についての結論を述べさせてもらいます。これからの企業は、「業務処理」のためのピラミッド型組織と、「情報処理」のためのフラット型組織の両方を併存させる必要があるということです。そして、フラット型組織はバーチャルなしくみで十分ということです。具体的には、トップからの情報発信がダイレクトに全社員・職員に伝わるしくみがフラット型組織だからです。つまり、トップは、今まで以上に、情報発信に工夫が必要な時代、 それが今の情報化時代だといえます。

2つの情報に関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P118〜121
さて、情報化時代対応の組織として、仕事のしくみから考えると「ピラミッド型」と「フラット型」の併存が、これからは重要だと説明させていただきました。
では次に、この二つの組織を同時に最有効に機能させる方法をご紹介します。
それは、この二つの組織を同時にウォッチし、問題があれば対策をとるなどする「コミュニケーション担当役員(Chief Communication Offiser)」の設置です。
「ピラミッド型組織」は業務処理をするための組織ですから、一番大事なことは、ターゲットである業務(仕事)をいかに明確にできるかということにあります。これを実現するには、組織の構成員である一人一人の社員、職員の方々がかかえている仕事を常時明確にできるしくみを持つということになります。私は、この作業を「仕事の棚卸」と呼ぶことにしています。組織全体でみると、個々の仕事の棚卸しの集積は膨大な数になると思います。
この膨大で全社的な「仕事の棚卸」を推進し、把握するのが「コミュニケーション担当役員」の最優先課題です。
なぜなら、社内のコミュニケーションが悪いのは、個々の社員のコミュニケーションスキルに問題があるというよりは、自分の仕事を明確にできないことにより、 他者とのコミュニケーションも十分に取れないというのが問題の本質だからです。「仕事の棚卸」の個々の一人一人の作業と、チームでの共有化はチーム力を向上させる 一番の近道だというのが、今までの様々な企業での指導経験から導かれた一つの結論です。
もう一方の「フラット型組織」については、同一情報を同時に全員にという「情報の公平化」の考え方が大事です。また、実務の面では、この公平化を具体的にどうするのかという問題があります。この情報の公平化は、ある金融機関の若手の事例で説明したとおり、「やる気」にかかわる重要な問題です。情報の公平化を推進し、 社内のやる気を向上させるのがコミュニケーション担当重役のもう一つの重要な役目ということになります。
別のいい方をすれば、「仕事の棚卸」で「やり方」を、「情報の公平化」で「やる気」を向上させるのが、コミュニケーション担当役員の責務ということになります。
その他にも、やらなければならないことは多々ありますが、まずはこの二点をしっかりやるだけで、企業業績は大きく変わることになると思います。

情報の使い分けに関する参考文献 「最強の時間力」P130
さて、この節の最後に、情報化時代に対応する一つのマネジメントモデルをご提案させていただきます。このマネジメントモデルは、一人一人が行っている様々な仕事に着目し、誰にでもあてはまり、どんな仕事にもあてはまるという全く新しい考え方から導かれたものです。
仕事は誰が行っても、「自分一人」でやるか、「他人と共同」でやるのか二つに収斂されます。そして、「自分一人」でやる仕事は業務処理と呼ぶことができ、この仕事を上手にこなすには、その業務の専門知識(ナレッジ)が必要です。一方、「他人と共同」でやる仕事は情報処理と呼ぶことができ、この仕事を上手にこなすには、コミュニケーションスキルが必要です。つまり、仕事を上手に進めるには、「コミュニケーションスキル」と「ナレッジ」は必要不可欠です。しかし、この二つだけでは十分といえません。もちろんこの二つのスキルが他者よりも長けていれば、成果が他者より良くなる可能性は高まりますが、多分劇的な差となってあらわれることはあまりないだろうと思います。なぜなら、この二つのスキルの必要性が導かれたのは、誰にでも当てはまる仕事という発想からです。仕事を科学的に捉えるには、もう一つの、どんな仕事にもあてはまるという発想も必要です。
さて、どんな仕事にもあてはまるという発想で仕事を捉えるとどうなるでしょうか?
本論の基調である両極併存で考えてみると、どんな仕事にも「はじめ」と「おわり」があるとか「量的要素」と「質的要素」があるとか「目標」と「実績」があるとかがわかります。つまり、どんな仕事も、形こそ違うけれども(見た目としては)一歩掘り下げて捉えると同じ要素から成り立っているといえます。このすべての仕事にあてはまる仕事の要素のコントロールが上手な人は、仕事の達人とも呼ばれたりする訳です。ここで、一つの推論を導くことができます。すべての仕事に共通にあてはまる要素があって、その要素のコントロール方法がわかれば、誰でも仕事の達人になれる可能性があるということです。私はこの仕事の要素のコントロール方法を「仕事のさばき方」のスキルとか、狭義の「タイムマネジメント」と呼ぶことにしています。
誰にでもあてはまる仕事の捉え方から導かれた「コミュニケーションスキル」と「ナレッジ」に、どんな仕事にもあてはまるという発想から導かれた「仕事のさばき方」のスキルは密接な関係になります。それは、「仕事のさばき方」のスキルが「コミュニケーション」と「ナレッジ」をつなぐ橋渡しの役目をしているというイメージです。
つまり、仕事を上手に進めるためのスキルは、「コミュニケーション」「仕事のさばき方」「ナレッジ」の三つから成り立っていて、「仕事のさばき方」が残り二つにサンドウィッチされている姿、私はこれを、マネジメントモデルと呼ぶことにしています。
この三層構造のマネジメントモデルは、企業変革や個人の生産性向上を考える時、土台となる重要な概念だと思います。個人にとっては、生産性向上のためのスキルアップは、この三つに求めることができます。つまり、「コミュニケーションスキル」の向上、「仕事のさばき方方のスキル」の向上、そして「ナレッジ」の蓄積です。この3つのどこが強く、どこが弱いかを自ら判断するなり、上司などが評価することにより、スキルアップの方向性も具体策も明確にすることができます。つまりスキルアップの実現の可能性は、今よりはるかに高めることができます。
また、組織力の向上や企業変革は、この三つのスキルを向上させる、または引出す「しくみ」なり「環境」なりをいかに整備するか、できるかにかかっています。個人の場合と同様に、組織にとって、この三つのスキルのどこが企業変革等のポイントかを判断、判定することにより、今までよりはるかに科学的なアプローチによる取組みが可能となります。

タイムマネジメントのしくみ関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P10


 

3.仕事を科学するということ

前節で、情報化時代がもたらした企業変革の必要性と、その取組みを科学的に行なう考え方をご紹介しました。
この節では、その考え方の核心部分である「仕事を科学する」ということについて述べさせていただきます。
ところで、仕事を科学するとは、仕事の本質をどう認識、把握するかということだと思います。その為の手法として、再三述べた「両極併存」の発想と、それに基づいて、仕事を客観的になるべく数字で捉えるいくつかの方法をご紹介します。
まず仕事を科学的に捉えるとは、仕事の中にある普遍性を見つけることだと思います。普遍性とは、いつでも、どこでも、誰でも、どのようなものにもあてはまる共通性ということだと思います。例えば、誰にでもあてはまるということを、ビジネス現場で言い替えると社長にも新入社員にもあてはまるということになります。「どのようなものにもあてはまる」ということは、コピーをとる仕事にも企画書を作成する仕事にもあてはまるということになります。
一見めんどうくさい議論のような気がするかもしれませんが、この仕事の普遍性を捉えるという作業は、個人のスキルアップにも、企業変革にも重要な影響を与えることになります。断言的にいえば、仕事の普遍性を認識、捉えることのできる個人は、スキルアップも容易にでき、また、組織で考えれば、構成員が仕事の普遍性を共通認識または、共通言語として活用できれば、企業変革も容易にできるといえます。
 現状において、ホワイトカラーの生産性向上が難しかったり、企業変革のさまざまな取組みが困難を極める一番の理由、原因は、この仕事の普遍性の認識不足、把握不足にあると 断言できます。つまり、仕事を科学しきれていないのでホワイトカラーの生産性向上も企業変革も難しくなっているといえます。逆に考えると仕事を科学すると、この両者を容易に実行することが可能となります。
それでは、私が唱える仕事を普遍的に捉える方法についてご説明しましょう。
まず、新入社員にも社長にもあてはまるという仕事の捉え方を「両極併存」の発想と、ビジネスの定番である5W1Hから導いてみます。
一人一人が行なっている個々の仕事に着目します。その仕事を「誰が?」行なっているかでみると、複雑にみえる仕事も、たった二つの仕事から成立っていることがわかります。それは、「自分一人でやる」仕事と「他人と共同でやる」仕事の二つです。これは、新入社員にも社長にも共通にあてはまる仕事の捉え方です。
そして、この捉え方に、投下時間というより客観性の高いものを加味すると、実におもしろいデータを入手することができます。
それは、業種・業態・規模にかかわらず、どの会社、組織においても、この二つの仕事に対する投下時間の役割は概ね、4:6となって「他人と共同でやる」仕事の割合のほうが多くなるということです。また、組織において階層別にこの二つの仕事の割合をみると、階層が上位の方ほど「他人と共同でやる」仕事の割合が増えるということです。この二つの仕事については、前節で組織論にかかわる重要な問題として、ご紹介したので十分にご理解いただけるものと思います。
次に「何をやるか?」で仕事を捉えてみましょう。やはり、これもたった二つの仕事に収斂させることができます。それは、「予定」の仕事と「突発・割込み」の仕事です。この仕事の捉え方も、新入社員から社長までに共通にあてはめて考えることのできる方法です。

仕事の分類法に関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P34
この二つの仕事に、先ほどと同じように、投下時間という切り口で、客観性を持たせると、やはり業種・業態・規模にかかわりなく、この二つの仕事の割合は概ね75:25という割合になります。ただ、この数字は10年ほど前に私が調査したデータです。昨今のIT化により、突発の割合はいくらか減ってきているように現場指導をしていると感じます。それは、非同時の通信手段であるメールの普及により、同時の通信手段である電話による「突発」の減少が影響しているように思います。本論をきっかけに、日本タイムマネジメント普及協会のホームページ上で皆様のご協力のもと、最新のデータを収集してみようと思っています。皆様のご協力をお願いします。
ところで、この「誰が?」と「何を?」による仕事の捉え方は、ある一つの重要な仮説を私達に提供してくれていると思います。
それは、「我が社は特別だから」とか「ウチの会社の特殊事情」という言葉は、どの企業、組織に指導に入っても聞く言葉です。しかし、この「ウチは特別」という考え方を、このデータは、全くの間違いであると指摘しているように思います。確かに各社・各人のやっていることは異なります。営業の手法も、仕事の進行方法も違うと思います。しかし、目に見える表面的な部分では、全く異なる仕事、作業をしているにもかかわらず、一歩掘り下げて仕事の普遍性のレベルで仕事をみると、どの会社も似たようなデータになります。これは、どの会社も異なる仕事をしているものの、仕事の進め方にある種の共通点があることを示しているのではないかと推論できます。これは、企業・組織の構成員である一人一人のビジネスマンの仕事の進め方に、会社や組織は違ってもある種の共通性があるということだと思います。
もし、この推論・仮説が正しければ、個人のスキルアップや企業変革においても、ある種の共通的な取組み方法が存在するのではないかという可能性を示していると私は考えています。つまり、個人の生産性を上げると同時に、組織力の強化も実現する「仕事の原理・原則」と呼べるような、普遍的な手法があると考えています。
仕事を科学することは、仕事の普遍的なしくみを捉えることでもあります。これを医学に例えれば、名医は、人間の体のしくみを熟知し、そのしくみに基づいて数多くの経験をして来たから名医たりえるといえます。仕事の達人も同様に、仕事のしくみを熟知し、数多くの経験により達人と成りえると思います。
では、ここで、仕事を科学し、仕事の普遍的なしくみから導かれる具体的な手法をご紹介しましょう。私は、この具体策を「仕事の原理・原則」と呼ぶことにしています。紙面の都合上、今回ご紹介する原理・原則はたった一つですが、仕事を科学する「両極並存」の発想をご理解頂ければ、みなさんもこの原理・原則をご自分で開発することは、十分に可能だと思っております。
まず、おさらいの意味で、新入社員から社長にまで当てはまる仕事の捉え方に、「自分ひとりの仕事」と「他人と共同の仕事」がありました。一方、コピーを取る仕事にも企画書を作成する仕事にも共通する要素として、「はじめ」と「おわり」がありました。
この二つを掛け合わせると、一つの仕事の原理・原則が導かれます。
それは、「自分一人の仕事のはじめとおわり」「他人と共同の仕事のはじめとおわり」の「四つの時間」です。
この「四つの時間」の原理・原則を知らずしてスケジューリングする人は、中世型マネジメントに、熟知して活用する人は科学的な仕事につながることになります。
多くのビジネスマンは中世型マネジメントにどっぷりつかっています。具体的にはスケジュール帳なり、スケジューラーを見れば一目瞭然です。「他人と共同のはじめ」のみの管理が 一般的です。残りの三つの時間に無頓着なので、努力の割には成果に結びつかない中世型マネジメントにつながってしまうと断言できます。また、個人のみでなく、チームや、組織でも、 中世型マネジメントは横行しています。その好例が、社内会議などの「時間厳守」です。この「時間厳守」の意味は、一般的には、「時間どおり始める」というスローガンです。このスローガンが守られているチームは、一体日本にどれくらいあるのでしょうか?これは「他人と共同のはじめ」にしか意識が向いていない好例です。本当に、この「時間厳守」のスローガンを実現したいなら、仕事の原理・原則から導かれた「他人と共同のおわり」に注目するのが科学的です。つまり、「時間どおり終る、終らせる」という意識に変えるだけで、成果の出る会議に変身させることのできる可能性は大いに高まるはずです。多分、この考え方が定着してくれば、遅刻する人の数も確実に減ると断言できます。しかし、遅刻者を「0」にすることはできません。なぜなら突発の仕事が存在するからです。
これが、仕事を科学することにより導かれた仕事の原理・原則に基づいた、科学的で生産性を高めることの一つの例です。
個人のスキルアップや、企業変革を成功させる最初の一歩は、この仕事の原理・原則を数多く、各人が身につけ、チーム・組織ではそれを共有できるかにかかっていると断言できます。

4つの時間に関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P32


 

4.仕事の原理・原則からみた企業変革の方向性

現代の経営にとって、企業の経営状態の判断材料はバランスシートです。バランスシートは、その会社の経営状況の様々な情報を提供してくれます。私の指導しているある金融機関の支店長さんも「融資の判断は、1に社長のやる気、2にバランスシート」とよく口にしますが、その後に「でもバランスシートはあてになんないからな」とおっしゃることもしばしばです。つまり、バランスシートは、様々な情報を提供してくれるものの、完全ではないということです。
 会社の経営状況を判断するのがバランスシートですが、ではその企業の構成員である一人一人の従業員の経営状況(業務執行状況)を判断するものは、あるのでしょうか?現状では、昇給やボーナスの査定などの人事考課ということになるのでしょうか。しかし、人事考果も完全ではありません。
 私は、このバランスシートが完全でない状況と、各従業員の業務執行状況を適格に捉えられないのは、同じ原因による異なる現象面のあらわれではないかと思っています。
 それは、本論のはじめにご説明したマネジメントのマクロ的アプローチかミクロ的アプローチかの違いにあるのではないかと思います。そもそも、マクロはミクロの集積です。ミクロのしくみ、状況を把握しきれないマクロは本来ありえないはずです。
 ミクロのコアモデルの集積がマクロのコアモデルを形成するといえます。会社・組織経営におけるミクロのコアモデルは、一人一人の従業員の仕事のすすめ方とその成果です。 この集積が会社・組織の業績となることについては異論がないと思います。
 そして、現状において、会社・組織の業績とその活用内容を捉えるものとしてバランスシートが存在しますが、このバランスシートのミクロのコアモデルが存在しないことが、バランスシートの完全性を実現できない第一番の理由だと思います。
 バランスシートはいうまでもなく、お金という単位で客観性を確保する手法です。しかし、その対極にあるその組織の構成員である一人一人の活動状況と実績を把握する客観性の単位は、お金ではないと思います。評価という点数です。一応点数ですから、客観性があるように思いますが、実はこの評価という点数は、基本的には、評価者の主観が色濃く出るものです。
 つまり、現状の会社・組織を評価するバランスシートと、各個人を評価する人事考課等には、一貫性がないということです。これが、双方の適格な状況を把握するのに大きな阻害要因に なっていると私は思っています。
 いってみれば、これも中世型マネジメントのひとつです。個人とその個人の集積である組織の評価が異なる視点で行なわれているので、様々な人事制度も、十分にそして完全に機能するといった状況になっていないのだと思います。能力主義制度や実績主義制度を導入しても、導入した側には満足があるかもしれませんが、導入された側の従業員には、何か釈然としないものが残る原因は、個人と組織の評価の基軸が異なることに求めることができます。

パフォーマンス、リソーセスマネジメントに関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P134
では、この点ついても21世紀型のマネジメント手法で、その解決策を考えてみましょう。個人にも、組織にも共通にあてはまる評価基準と評価方法を考えてみましょう。
 実は、本論の中で既に、そのヒントは提供してあります。それは、投下時間という切り口です。お金という切り口ではなく、投下時間という切り口が、個人と組織を共通に同じ概念で評価できる唯一の客観性のある単位だと断言できます。
 つまり、バランスシートは「お金の使い方」を経営判断するものであるのに対し、「時間の使い方」を経営判断に導入するということになります。
 その際の留意点は、表面的な仕事を対象に投下時間を判定しても、たいして意味のあるデータは導かれないということです。
 かつて私も参加していたシャープさんのザウルス拡販計画のなかで、あるソフト開発会社さんが、この投下時間のデータをザウルスでとるソフトを開発しました。しかし、残念なことに、そのソフトは、表面的・具体的な仕事を入力し、その投下時間を把握するものだったので、際だった成果を上げることはできませんでした。
 また、ビジネスプロセスを分析して業務改善につなげるという手法も存在しますが、これも表面的・具体的な仕事を対象とするのであまり期待できないと私は考えています。
 つまり、この手の経営判断につなげるようなデータは、社長から新入社員にまであてはまる普遍性をベースにしなければ、せっかく収集したデータを読み解くことはできないことになります。
 そこで、投下時間のデータを取るとすれば
・「自分一人の仕事」と「他人と共同の仕事」
・「予定の仕事」と「突発の仕事」
・「継続的な仕事」と「企画単発的な仕事」
・「パフォーマンスに関わる仕事」と「リソーセスに関わる仕事」

の4項目で十分だということになります。さらに欲をいえば、それぞれの仕事の優先順位の基準を設け、そのデータを取れれば、ほぼ完璧だと思います。
 実は、この4項目だけでも組合せは、2の4乗で16通りの仕事への投下時間のデータがとれます。それも一人一人の個人とその個人の集合体であるチームや会社の共通したデータです。 つまり、個人と組織を同じ土俵で評価できるデータです。このデータに、従来からあるバランスシートのデータを重ね合わせて判断すれば、かなり精度の高い、経営の実態が把握できます。
 具体的には、一日の中で処理した仕事に「自分一人」か「他人と共同」か、「予定」か「突発」かなどのフラッグを立てて、二つのセットの投下時間の割合を読み取るということです。既に私が指導させている企業では、この方法を採用して、投下時間という切り口で仕事のすすめ方の状態を分析・評価させていただいています。
 例えば、営業部隊などで、このデータを取ると「自分一人」と「他人と共同」の割合で、「自分一人」の方が多かったとします。そして、営業成績が芳しくないという事実があれば、 「他人と共同」の仕事である客先での投下時間が少ないせいではないかとわかります。その結果が出れば、「他人と共同」の仕事の時間が増えるような仕事のさばき方に切り替えれば、 良いということになります。このような簡単な事例ばかりではないですが、投下時間の割合というデータは、極めて重要なマネジメント上のヒントを与えてくれます。つまり、立派な経営判断の材料といえると思います。
 そして、このデータは、一人一人の個人が自分の仕事のさばき方のチェックや改善に使えるだけでなく、チームや部内または会社の平均をとることができれば、チームや部内または会社の仕事のすすめ方のチェックや改善の方向性を見つける時の極めて科学的で客観性の高いものになるといえないでしょうか。
 この手法が、仕事の原理・原則から導かれた改善・改革の方向性や具体策を提供することになります。そして、それは仕事の原理・原則からのアプローチなので、効果的で実行性の 高い対策となります。簡単にいえば、「ちょっとの努力で、大きな成果が期待できる」ということです。
 この節のまとめとして、お金の単位で評価分析するバランスシートと、時間の単位で評価分析する手法を歯車にたとえて話してみましょう。一般的には、大きな歯車と小さな歯車が あれば、大きな歯車が組織が、小さな歯車が個人ということになります。この発想で行なわれているのが、バランスシートということができます。しかし、本論の考え方は、大きな歯車が個人で、小さな歯車が組織という発想です。それは、「個人がちょっと変わると組織が大きく変わる」という発想でもありますし、組織を考える時には、その構成員である一人一人の個人を、じっくり見つめないと組織の本質は見えないということでもあります。


 

5.企業変革の具体策

企業変革の出発点は、仕事を科学すること、仕事の普遍性を見つけることだと説明してきました。具体的には、新入社員から社長まで、コピーを取る仕事から企画書を作成する仕事までに共通に当てはまる、仕事の原理・原則を見つけることだと述べさせていただきました。
 この節では、その企業変革の具体策についてご説明いたします。まず、企業変革を実施するにあたってのキーワードをご紹介します。それは、「社長も変わる、社員も変わる」という事です。このキーワードは、全社で性格を変えましょうという意味ではありません。社長が変わるとは組織が変わるという意味です。社員が変わるとは、社員のスキルが向上するという意味です。そして、この両方にあてはまるのが、仕事を科学するという発想からのアプローチだということです。
 つまり、企業変革を実現するには、仕事を科学する心がけで臨み、組織のしくみ、環境を変えると同時に、一人一人の社員が恒常的にスキルアップする、できる状態にするという事だと思います。
 では、その点をご理解いただいた上で、私が指導させていただいている事例をご説明します。
 まず、体調不良で医者にかかる時と同じですが、何らかのマネジメント上の問題があれば、どこが悪いかを特定するための、検査・診断は不可欠です。医療の場合は、経営よりもはるかに科学的に行なわれているので、様々な検査手法や診断機器も充実しています。よほど、変な病院に行かない限り、病原の発見はかなり高い精度で実現されています。しかし、経営の世界での検査・診断の制度は、医療の場合のそれに比較すると、かなり落ちます。その一番の原因は、仕事を科学できていないからだと思います。
 医療の世界にMRIという検査・診断機器があります。これは磁気を使って、体の中のひとつひとつの組細胞の活性化状態を把握し、体の中の問題部位を発見するというものです。私のところの企業診断にも、これに似たような手法があります。それは、従業員個々の「仕事のさばき方」の長所・弱点を五者択一の質問をすることにより導き出すという手法です。体が会社であれば、細胞は個々の従業員です。個々の従業員の長所・弱点を把握するのは、正しく医療の世界でのMRIのようなものです。
 このMRIのような診断をすることができるのは、「コピーをとる仕事も、企画書をつくるのも同じだ」という発想から導かれた普遍的な仕事の要素を明確にしたので、出来るわけです。どんな仕事にも、普遍的に存在する7つの要素と、コミュニケーションスキルの確認を100問程度のアンケートにお答え頂く事により、各人の「仕事のさばき方」の長所・弱点を把握することができるのです。
 医療の場合は、問題のある部位・細胞を改善する為の治療や場合によっては、切除をすることになりますが、私の場合は、各人にその結果をフィードバックし、本人が改善するように取組むということになります。
 また、このアンケート調査を、チーム単位、部門単位、全社で平均をとる、または、階層別にとると、それぞれの単位での長所・弱点の傾向も読み取ることができます。そして、過去の事例で言えば、その精度はかなり高いものです。このアンケート調査により、各人と組織の概ねの問題点を把握することが可能です。なお、当社のホームページ上でこのアンケート調査の簡易版を無料で提供しておりますので、一度お試しください。

詳しい診断をしたい方はこちらです
 さて、このアンケート調査だけでもかなり科学的なアプローチなので、この結果からいきなり変革に着手しても良いのですが、もっと科学的に分析した方が、結果がもっとよくなるのは道理です。
 医療の世界でも、MRIだけでいきなり手術などをする病院や医師はいないはずです。血液検査やCTなどを行ない、診断の精度を向上させてから、最終的な治療行為に入るわけです。
 企業変革も同じだと思います。個々の組織として従業員の活性化状況がわかっただけでは精度の高い対策は取れません。そこで、次に行なうのが、「投下時間の分析」という作業を行ないます。先ほどのアンケート調査がストック調査とすれば、この調査はフロー調査です。前者がスキルの調査であるのに対し、後者は、そのスキルの活用状況の調査ということに なります。医療に例えれば、血液検査や超音波エコー診察のようなものです。この投下時間の調査は、過去に色々なコンサルティングファームにおいて、実施されて来ました。しかし、それらのほとんどがビジネスプロセス別の調査の為、際だった成果にはつながっていないと思います。血液検査でいえば、血液型とペーハー値などの見た目すぐわかる程度の検査ということになるでしょうか。
 私のところの、投下時間調査は、ビジネスプロセスでの調査は行ないません。社長にも新入社員にもあてはまる仕事の種類別に特化しています。これにより、血液検査でいえば、肝臓が機能低下しているとか、ある種特別なウィルスが混在しているとかが分かるようなレベルで、診断をする事が出来ます。つまり、成果の出ない原因を投下時間の分析から判定することが可能だという事です。
 この二つの調査で、調査対象企業とその従業員についての状況の8割方を把握することが可能です。ちなみに、私の行なうトレーニングコースや社内研修でも、各セッションごとに、 この二つの調査を実施しながら進めることにしています。つまり、単なるノウハウ・スキル伝授のセミナーではなく、実際参加している方々の問題解決型のセミナーになるように心掛けています。
 この他に、各従業員の生の声から問題点を洗うヒアリング調査や、各従業員の重点の置きどころを確認する「業務優先順位調査」、更には、リアルな現場を把握するための「同行調査」などもあります。
 いずれにしましても、仕事を科学的に捉える手法による診断・調査は、その結果も精度の高いものになると経験から自負しています。
 さて、仕事を科学する手法による診断のあとは、そのデータをもとにした対応策の策定と実施ということになります。
 個別のデータにより、対応策も個別となりますが、取組むべき方向性は、実は共通です。それは、組織を変える取組みと個人を変える取組みの二つです。もう少し具体的に言えば、個人はスキルアップする為に、仕事を科学的に捉える手法と、それにもとづく具体的なスキルの修得ということになります。一方、組織の方は、個人のスキルアップを支援するルールづくりと、スキルを発揮できる環境づくり、スキルアップできる環境づくりということになります。個々のデータにより、この二つの方向性は同じでも、取組む具体的な内容は異なるということになります。医療でも、診断の結果、内科的なアプローチで改善するか、外科的なアプローチで改善するかの二つの方向に分かれるのと同じだと思っていただければと思います。つまり、効果を出すには、両方同時に行なうということです。個人はスキルアップ、組織はルールづくりと環境整備です。医療で言えば、前者が内科的な対応で後者が外科的ということ になるでしょうか。

個人と組織に関する参考文献 「図解 できる人のタイムマネジメント」P52
 そして、医療にも、脳外科・胃腸科などのように科目が分かれると同じように、企業変革にも大きく、三つの科目に分かれます。
 それは、既にご紹介しました「コミュニケーション」「仕事のさばき方」「ナレッジ」ということになります。この三つの分野でそれぞれ、個人も組織も取組みをする。または、この三つの分野のどこか一つか、または二つを取組むということになるのが、私のところで進めている企業変革の取組みということになります。
 この作業を継続することにより、組織的な取組みであるルールづくり、環境整備が成果をあげて定着した時、「社風・企業風土が変わった」ということになります。
 つまり、企業変革は、社風なり、企業風土が変わったと自他ともに認められた時、はじめてある程度の成果があったといえると思います。


 

6.おわりに

本論は、仕事を科学する、仕事を普遍的に捉えることの重要性と、そこから導かれる個々の従業員の生産性の向上を出発点とした企業変革について、説明させていただきました。
 おわりに、私の愚痴に少々お付き合いください。ひょんなきっかけで足を入れたこの世界ですが、当初は、英国で開発された「'A'Time(エータイム)」のセミナーの実施だけでした。そこから、様々な経験をもとに、本論に到達しましたが、到達するまでには、大変な労力と資金がかかりました。決して、ひょこっと出来た考え方ではありません。2002年に、この考え方と手法を伝えるためにNPO法人日本タイムマネジメント普及協会も設立し、多くの個人・企業からお問合せ、仕事の発注もいただきました。本論をかりて、深くお礼申し上げます。
 しかし、この考え方の普及は、当方の力不足で、まだまだ弱く、社会を豊かにすることに十分に寄与している状況ではないのも事実です。
 そこで、本論をお読みいただき賛同いただけた皆様にお願いがあります。
 それは、本論の普及にお力添えをいただきたいということです。手前勝手で恐縮ではありますが、お力添えいただきたいメニューを以下に、ご用意いたしましたので、できる範囲で結構ですので、お取組みいただけると大変幸せです。
 1.ホームページを知人・友人に紹介する
 2.本論を知人・友人に紹介する
 3.NPOホームページでのデータ収集に協力する
 4.著者の本を書店で購入する
 5.ホームページ上で販売している著作を購入する
 6.NPOの会員となる
 7.NPO主催のセミナーに参加する
 8.NPO活動を支援するため賛助金を提供する
 9.企業変革を受けてみる
 10.陰ながら応援する
以上の10のメニューのうち、最後の10番目以外の取組みを是非ともお願いしまして、本論を締めさせていただきます。
また、研究者の方で、本論に興味をお持ちになった方も、ご連絡下さい。現場指導の傍らでの理論開発、体系化には、かなりの無理があります。ぜひとも、本論で展開した概念をより普及させる為の、学術的活動をになっていただける方の登場を期待しています。
では、皆様とともに、豊かな個人と社会を築けることを期待しております。

行本 明説