■□■□ プロローグ まずは仕事のしくみを知ろう ■□■□ | |||||||||||||||||||||||||
01 「タイムマネジメント」は仕事の管理 ビジネス界では「時間」の概念は、極めて曖昧になっているのではないでしょうか? こうしたブラックボックスを明らかにし、 仕事のしくみと時間の使われ方を解きほぐすのが本書のねらいです。 |
|||||||||||||||||||||||||
「時間がない!」は、ビジネス界の定番用語です。 いろいろな局面で使われます。たいへん重宝な言葉でもあります。 上司に嫌な仕事を頼まれたときも、 「すみません。時間がないので・・・」といえば、その仕事から逃れることができる可能性は高まります。 時間がない理由や背景、その原因を突っ込んでくる人があまりいないので、このフレーズは、人間関係において力を持つわけです。 つまり、「時間がない」=「多忙で手が回らない」、という風に一般的には理解されています。 決して「時間がない」=「やりたくなーい」、という風にはなっていません。 しかし、本当にやりたい仕事、何がなんでもやるべき仕事であれば、時間がなくても、多くの人は取り組むはずです。そう考えると、今一度、この「時間がない」は、どんな意味で発せられているのか、その都度、確認する必要がありそうです。 ビジネス界においては、どうやら「時間」という概念は、極めて曖昧、ブラックボックスになっているのではないか?というのが、本書の問題提起です。 そして、そのブラックボックスを明らかにするのが、本書のねらいだと思っています。 この問題を解決するために、仕事と時間の関係を理解しておく必要があると思います。 仕事と時間の関係を整理するために、本書では、仕事と時間をつなぐものとして、一人ひとりの心模様をベースに、仕事のしくみと、時間の使われ方を解きほぐすことにします。 時間は、万人に共通に一日24時間あります。 そして、万人に共通に、同じ速さで過ぎ去っています。 これを変更しようと手を加えて一日30時間に増やしたり、時間の進み具合を変えたりすることは誰にもできません。 つまり、仕事と時間の関係を明らかにする作業においては、物理的な時間は不変と考えることができます。 変化が生じるのは、仕事そのものと、それを行なう一人ひとりの個人にある、といえます。 そんなわけで、私は、「タイムマネジメントは時間管理ではなく、仕事の管理だ」と、考えています。 仕事の管理をするためには、仕事のしくみと、それを管理する一人ひとりの個人の心模様(意識・考え方)を充分に理解する必要があります。 単なる時間の使い方や、仕事の進め方のハウツーではなく、万人に、そしてすべての仕事に当てはまる原理・原則からアプローチすることがたいへん重要だと、本書では考えています。 |
|||||||||||||||||||||||||
02 「仕事のしくみ」を知ろう ミクロからのアプローチは、マネジメントの世界においても必要は方法論です。 本書では、「仕事」へミクロ的にアプローチして、仕事のしくみを解き明かすところから論を始めます。 |
|||||||||||||||||||||||||
私は子供の頃、鉄腕アトムの大ファンでした。 さすがに、将来大きくなったら鉄腕アトムになろう、とは思いませんでしたが、お茶の水博士のようになって科学技術庁の長官になりたいと真剣に思っていました。今では、政治家にならないと科学技術庁の長官には、なかなかなれないとわかっていますが・・・。 そんなわけで、子供の頃から、理科とか科学には大変な興味がありました。現在も、科学雑誌や量子物理学の本を読むのは、数少ない趣味の一つです。 しかし、私の仕事のフィールドは、経営やマネジメントの分野です。 この世界は、私の一番の興味の対象である量子物理学とは、程遠いところにあると思います。 研究分野が異なるだけでなく、研究に対するアプローチのしかたがまったく逆といってもいいと思います。 量子物理学は、究極の存在を見極めるために、「よりミクロへ」とアプローチがなされていますが、経営、マネジメントの世界は、「よりマクロへ」が主流だったように思います。 企業や社会の組織変革や構造改革への取り組みも、一人ひとりがどうするかという、ミクロからのアプローチではなく、組織体制をどうするかとか、社会のしくみをどうするかとかのマクロからのアプローチばかりのような気がします。 量子物理学での「よりミクロへ」のアプローチは、結果的にパソコンの発明やら、私たちの日常生活に様々な恩恵を与えるような成果を生み出しています。 私は、このミクロからのアプローチは、経営、マネジメントの世界においても、必要な方法論だと考えています。 しかし、残念ながら、そのアプローチは、これまでまったくなされて来なかった、といってもいいと思います。 例えば、本書のテーマの一つである「仕事」について考えてみましょう。 「仕事って何ですか?」という問いに対し、万人が共通に同一の答えを出すという状況には、現時点ではなっていないと思います。みんな様々な答えを出すことになります。 そして、その多くは、私流に言わせてもらえば、「マクロ」的です。 「社会発展の原動力」とか「生活を安定させるための基礎」とか様々な答えが予測されます。 「ミクロ」的なアプローチの答えは思いつかない、というのが現実ではないでしょうか? 本書では、「仕事」をミクロ的にアプローチして、仕事そのもののしくみを解き明かすところから論を始めたいと思います。 なぜなら、仕事のしくみを知らずして、仕事の効率化を語るのは、迷信で病気を治そうとすることと同じですし、仕事の効率化を知らずして、組織体制や、社会構造を語るのは、原子構造を知らずして物体を語るのと同じだからと私には思えるからです。 |
|||||||||||||||||||||||||
03 「仕事のOS」とは何か? 「仕事のすすめ方(Operating)の標準(Standard)という意味です。 この考え方は仕事を単純化して分かりやすくしてくれ、仕事の改善策も容易に分かるようになります。 |
|||||||||||||||||||||||||
それでは、仕事をミクロ的にアプローチするための二つの重要な考え方をご紹介します。 本書でご提案、ご紹介している様々なスキル、ノウハウ、ハウツーは基本的にこの二つの考え方をベースに導かれています。 では、まずはじめに、みなさんは「仕事のOS」という言葉を聞いたことがありますか? 多分ほとんどの方は初めて聞く言葉でしょう。この本によって、流行語になってくれれば、いいなあとも思ってしまいます。なぜなら、この言葉が流行語になれば、間違いなく日本経済は再生しますし、一人ひとりのビジネスマン、OLの方々も今までとは比べものにならないほど、楽しく効率的に仕事ができるからです。 では、この「仕事のOS」とは何かを、ご説明しましょう。 これは「仕事のすすめ方(Operating)の標準(Standard)」という意味です。 1995年に、私が『ザウルスで仕事革命』(TBSブリタニカ刊)という本を出版したときに、用いた概念です。「仕事のすすめ方の標準」ですから、仕事をやる人、すべてに当てはまる考え方です。新入社員から社長さんまで、すべての人の仕事は、下図のように四つに分類することができます。つまり、 「誰が行なうのか?」 「何を行なうのか?」 「どう行なうのか?」 「なぜ行なうのか?」―ということです。 こうやってみると複雑そうに見える仕事も、「仕事のOS」の分類法に沿って考えると、それぞれたった二つの要素に分けられ、簡単に理解することができます。 複雑そうに見えるのは、それぞれ対の組み合わせになっているからで、例えば「仕事は誰がやるか?」で見れば、「自分一人」か「他人と共同」でかというように、とっても単純な構造です。 さらには、私たちの仕事は、それぞれ二つの要素のバランスによって、仕事の成果も決まってくることが分かります。例えば「自分一人の仕事」が100%で、他人と共同の仕事が0%の人は、外部との接点がないわけですから、成果は期待できません。逆に「他人と郷土の仕事」が100%だったら、多分その人は口先だけといわれるに違いありません。なぜなら、資料作成したり、考えたりする時間もないわけですから。 この「仕事のOS」による仕事の分類は、次節の「仕事のスペクトル」をかけあわせると、様々な、具体的な策は、打出のこづちのようにいくらでも出てくるといえます。 |
|||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
04 「仕事のスペクトル」とは何か? 太陽光をプリズムを通して分解するように、 仕事の要素を分かりやすくスペクトル分析したものです。 それぞれの要素は、あらゆる仕事に共通に存在するといえます。 |
|||||||||||||||||||||||||
前節の「仕事のOS」同様、聞き慣れない言葉です。 しかし、この「仕事のスペクトル」も、仕事の成果を上げようと思ったときには、たいへん役に立つ考え方です。本書の考え方、具体的スキル(方法)の根源をなす、大事な仕事の捉え方です。「仕事のOS」が仕事の分類を容易にするための考え方だったのに対し、「仕事のスペクトル」は、すべての仕事に含まれている、仕事の要素を分かりやすく表現したものです。 すべての仕事に含まれている、仕事の要素!?これまではかなり分かりづらいと思います。 では、「コピーをとる仕事も、企画書をつくる仕事も同じ要素から成り立っている」といったらどうでしょう。多くの人は、「何を寝ぼけたことを!」と思うでしょう。しかし、本書では、「同じだ!」と声を大にして叫ばせていただきます。前節で「社長の仕事も新入社員の仕事も同じだ!」、と叫びました。この節では、「コピーをとるのも企画書をつくるのも同じだ!」、という考え方を披露します。 その前に、みなさんもよくご存知の太陽光について、ちょっと語らせてください。 太陽光は普段、私たちの地球を照らして、様々な命にエネルギーを与えています。一言でいえば、あたたかくて明るい光ということでしょうか。しかし、その太陽光も、雨上がりには、単に明るいだけではなく、美しい虹を作ってくれたりします。この虹を作ることがポイントです。 普段は単に明るいだけなのが、ひとたび水滴を通過すると、七つの色に分解されていまい、それが虹に見えるわけです。水滴でなくても、プリズムを通して同じことが起こります。つまり、太陽光は、いろいろな色(波長の違う波)の集合体ということです。一般的にこのことを「スペクトル」と呼びます。 そこで、仕事の要素も、太陽子をプリズムを通して分解したようにできないものか、と考えました。考えた理由は、仕事のしくみを知らないと効果的な対策も取れない、と思ったからです。 悪戦苦闘の末(みなさんには関係ありませんが・・・)下図にように、仕事をスペクトル分析することに成功しました。この分析が必ずしもすべて正しいかどうかは、残念ながら分かりません。ただこの手法で、業務分析、仕事の分析をして、成果を上げている企業もありますので、まったく間違いではないだろうと思っています。 例えば「マネジメント分野」は、太陽光も七色なので、「投下時間」から「機構」までの七つの要素にまとめました。仕事は自分と他人の共同作業なので、光の波長の代わりに、自分と他人(組織)との力関係の強弱によって、マネジメントの「対象」を七つとしました。自分と他人の力関係といっても漠然としているので、自分がコントロールできるものと、他人の存在があって初めてコントロールできるものを対にしてみました。例えば、「投下時間」には、自分がコントロールする仕事の「はじめ(開始)」と他人とコントロールする仕事の「終わり(期限)」という具合です。 そして、図の七つの要素は、コピーをとる仕事にも、企画書を作成する仕事にも、バランスの強弱や、難易度の差こそあれ、共通に存在するといえるわけです。 |
|||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
05 自分一人では仕事のならない! さて、仕事って何でしょう? 本書では、「仕事は、目標達成のための詩文と他人の共同作業」と捉えています。 簡単にいえば、一人では仕事にならない、ということです。 |
|||||||||||||||||||||||||
効果的で効率的な仕事をするためには、仕事のしくみを知るのが大事なこと。そして、仕事のしくみの捉え方として「仕事のOS」と「仕事のスペクトル」の考え方をご紹介しました。この節では、さらに仕事そのものとは何か(難しくいえば定義)を、明らかにしておこうと思います。 さて、仕事って何でしょう? 私たちの主催するセミナーでも、よくこの質問を参加者の方々にすることがあります。 そして返ってくる答えは、「生きるための術」とか、「お金もうけの手段」とか、「豊かな生活をするため」とか、いろいろ出て来ます。 なかには「目標実現のためのあらゆる手段」、なんて返答してくださる方もいます。 なんで、こんな話をしているかというと、タイムマネジメントは「時間の管理」ではなく、「仕事の管理」ですから、効果的に進めるには、「仕事」そのものを知らないと成果は期待できません。「仕事」の捉え方が違うと、自ずとその進め方にも差が出てきます。 本書では、「仕事は、目標達成のための自分と他人の共同作業」と捉えています。 簡単にいえば、一人では仕事にならない、ということです。物理学でいう「仕事」は一人でも成立しますが、ビジネスにおける「仕事」は一人では成立しません。 仕事には、社内であれ、社外であれ相手(他人)が必要で、その他人とうまく事を進めるには、コミュニケーションは不可欠です。 ここで「仕事のOS」に立ち帰ってください。 仕事には「自分一人でやる」仕事と、「他人と共同でやる」仕事の二つがありました。 あれ?「自分一人でやる」は、さっきの定義には、条件がついていました。「目標達成のための」です。「自分一人」の仕事も、この視点でいうと、目標達成のための一つのプロセス、もっとわかりやすくいえば、他人との共同作業を円滑に進めるための一つのステップと考えてください。 さて、重要なことは、「自分一人」と「他人と共同」の仕事の割合です。おおむね4対6で「他人と共同」のほうが多いわけです。そして、この「他人と共同」の仕事は、会議、打合せ、電話、商談などコミュニケーションスキルの必要なものばかりです。 つまり、私たちの仕事の六割以上はコミュニケーションだといえます。 仕事は自分一人では、目標の達成はできず、上手に進めるためにはコミュニケーション、つまり相手と分かりあえることが重要だ、ということがあらためて分かります。 そして、この分かりあえるポイントが、自分に対しては「納得」、相手に対しては「調整」(相手が「納得」)ということになります。これについての詳細は第5時限で展開させていただきます。 また、別の視点からいえば、「仕事のスペクトル」は自分と他人と力関係の強弱から成り立っていますので、コミュニケーションの強弱から成り立っているともいえます。 |
|||||||||||||||||||||||||
|