■□■□ 第8時限 「仕事」の提唱と 「仕事の型をつくる」ということ ■□■□ |
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57 「仕事の型」をつくりだそう 「型」は、繰り返し行なうことで、その技術の本質(心)にいたるよう組み立てられている、 一切の無駄な動きがないものです。 仕事も「型」になっていれば楽にでき、生産性に直結します。 |
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日本には、様々な「道(どう)」があります。 もちろん国道や県道などの道ではありません。剣道、柔道、茶道、華道などの「道」です。 それらの「道」の共通点は、「型」にある、と私は考えています。 「型」は「形から入って心にいたる」ための一つの手段だと思います。 私も剣道の初段を受験するとき、日本剣道型が試験科目なので勉強しました。 当時は、中学生でしたので、「形から入って心にいたる」なんてことは、想像もつかず、ただ初段を取るためにしょうがなくやったものです。しかし、何度もやっているうちに、何となく、おごそかな気分にもなり、急に自分の腕が上がったような錯覚におちいったことを思い出します。多分、多くの剣士が私のように、錯覚をしながら強くなったのかなあと思います。 華道や茶道でも同じなのだろうと思います。 技術を身につけるには、先人が悪戦苦闘のすえ、編み出した方法というものが、私たちに遺産として、役に立つように世の中はできているのだと思います。 今風にいえば、「技術のDNA」が「型」ということになるのでしょうか。 本書の締めくくりとなるこの章で、私は「仕事道」の提唱と「仕事の型」をお伝えしようと思います。 いかにアメリカナイズされた今の日本であっても、私は日本人です。ビジネスで成果を挙げるにも、単なるアメリカ流では納得がいかないのです。日本人としてのアイデンティティにこだわりたい、という思いが「仕事道」と「仕事の型」に行きついたわけです。 「型」は、繰り返し、繰り返し、行なうことにより、その技術の本質(心)にいたるよう、組み立てられているものです(そのはずです)。 そして、それは合理的です。 武道の型も、茶道のお手前も、一切の無駄な動きがありません。究極のリストラといってもいいと思います。 つまり、無駄がない、ということは、成果、生産性に直結している、ということだと思います。 次節以降、具体的に、「一日のプランニング」「仕事の棚卸し」「自分へのアポイント」の三つの「仕事道」の「型」を紹介させていただきます。 なお、本書の構成の基となっている、弊社のトレーニングコース修了者に渡される、「処事七韜三略」とは、この三つの型のことを考えていただいてもよいと思います。 ※実際の修了証には、一日のすごし方を書いてあります。 |
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58 「一日のプランニング」をしよう 朝の仕事のスタート前に「一日のプランニング」をしましょう。 その日のコンタクトするべき人の名前を書き出し、仕事をリストアップ。 さらにできれば、投下時間の読みをしておくと完璧です。 |
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「仕事道の型」の第一は、「一日のプランニング」です。 「ローマは一日にしてならず」という、タイムマネジメントにぴったりの格言があります。 しかし、そのための具体策は、見たことも、聞いたこともありません。感覚的には理解できても、具体策がないと実践できません。実践できないと、その格言は精神論に終わってしまいます。 この格言の実践編が、「一日のプランニング」だと思ってください。 ちなみに、この手法を取り入れたある企業で、おもしろい結果が出ました。 入社1年目の社員を二つのグループに分けて、一つは「一日のプランニング」をやるグループ、もう一つはやらないグループにして、半年後の評価をしたところ、半年間やったグループは入社2〜3年生と同程度の成果を出すことができました。この「型」は、それほどパワフルなスキルだという一つの証です。 さて、それではやり方と、その根拠、考え方も併せてご紹介しましょう。 まず、一日の仕事のスタート前に、5〜10分間の時間を確保して、この作業を行なってください。前の日にやっておかないと落ち着かないと思うかもしれませんが、当日の朝が一番、リアルに考えられますし、最新情報で考えられます。 そんなわけで、朝の仕事のスタート前に行なってください。 時間を確保したら、その日のうちにコンタクト、コミュニケーションしなければならない人の名前を書き出してください。名前と目的に、コンタクト方法も記入しておくとより具体的になります。電話、FAX、Eメール、手紙、社内であれば個別の打合せなどとなるはずです。この作業を一番に行なうのは、仕事の60%以上は、コミュニケーションがらみの仕事だからです。 次に、その日行なう仕事をリストアップします。できれば、その仕事にかかる投下時間の読みをしておくと完璧です。そして、その中で、一番大事な仕事を一つだけ選び、その仕事を何時から行うかを決めてください。 この一日のプランニングの作業で、時間を確保するには、一つだけです。リストアップした仕事で、一番大事なものだけです。 なぜかというと、仕事は予定通り行かないのが当たり前だからです。一日で一番大事なものだけでも、予定通りいくようにする。または、そうなるように努力するということでもあります。この方法が、本書でも説明した「パレートの法則」の具体策にもなります。 欲張りな人は、一つじゃ物足りないと思うかもしれませんが、その日の一番大事なもの(実は、その日の一番大事を分かっていない人がほとんどですが・・・)を、確実にその日のうちに処理できていますか?多分、できている人は、本書を買っていないだろうと思います。 一つで充分です。まずやってみてください。 |
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59 「仕事の棚卸し」をしよう ときには、今抱え込んでいる仕事を全部書き出すようにしましょう。しかも、できるだけ具体的に。 そうすれば仕事の問題点も、今やるべきことも、仕事の進め方も、見えてきます。 |
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仕事の型の二番目は、「仕事の棚卸し」です。 初めて耳にする人も、何となく、そのイメージはお分かりいただけると思います。 店舗では商品の棚卸しを定期的に行ないます。売るものは何か?を明確にするのと、バランスシートをつくるためです。コンビニのPOS(販売時点情報管理システム)にいたっては、リアルタイムでこの棚卸しができ、時間帯、曜日別の販売戦術作成にも活用されています。 在庫が分からないと、売り方も本当の意味では決まらない。効果的な売りもできません。 しかし、私たちの仕事で、これと同様の作業を定期的に行なっている人は、まれです。切羽詰ってお尻に火がついた日だけ、その日やることを書き出す人がいます。やらないより、ましですが、その方法で、きびしい一日が乗り切れたのなら、普段からやってもいいはずなのに、やりません。 つまり「型」になっていないということです。 「型」にすれば、もっと楽に仕事ができるはずです。 仕事の棚卸しに関するエピソードとして、こんな話があります。 「昔アメリカの大富豪の実業家が事業拡大で、てんてこまいになったので、あるコンサルタントを招聘しました。そのコンサルタントに、今抱え込んでいる問題を説明し、対策を相談したところ、コンサルタントは、紙とエンピツを用意させ、今抱え込んでいる仕事を全部書き出すように、その大富豪にアドバイスしました。大富豪は、当初、もっと具体策を!と腹を立てましたが、自信に満ちたコンサルタントに促され、アドバイスに従って、書き終えました。そして、大富豪は、『わかった』の一言で、モヤモヤを解決、気分スッキリで、そのコンサルタントに数万ドルの報酬を払ったとさ」―なんて話も、実は「仕事の棚卸し」です。 前にお話したとおり、タイムマネジメントは、時間管理ではなく仕事の管理ですから、仕事のリストアップ(棚卸し)ができていないと、効果的に行なえません。いわば、「仕事の棚卸し」は、いい仕事をするための前提条件です。 さて、具体的な方法です。 とにかく書くことです。 書き方は、個人差が出るかもしれませんが(実は、この棚卸し作業で仕事のできる人とできない人が分かります)、できるだけ具体的に書くということです。仕事のできない人がこの作業をすると、抽象的、漠然的な内容となって、「じゃ、まず、何をやるの?」がはっきりしないことが多いものです。 仕事のできない部下を抱えて、悩んでいる管理職の型、一度、やってみてください。その部下の棚卸しを具体的にアドバイスするだけで、その社員は絶対成長します。力をつけます。そうでなかったのは、今まであなたの指導がまずかったから、といっても過言ではないと思います。 |
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60 「自分へのアポイント」を取ろう 他人とのアポイントに加えて、自分へのアポイントを4週間先まで、スケジュール帳に、 記入するようにしましょう。これができれば主体的、積極的な仕事への大変身となります。 |
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仕事の型の最後は、「自分へのアポイント」です。 他人とのアポイントは、スケジュール帳に記入する人がほとんどでしょう。会議や商談、打合せなどは、スケジュール帳に記入します。しかし、それらの仕事は「仕事のOS」の考え方でいうと「他人と共同の仕事」です。 つまり、対極にある「自分一人の仕事」がスケジュール帳から欠落しているわけです。だから、いつも時間が足りなくなったり、後手の仕事になったり、あたふたの連続となってしまうわけです。 それを打破するのが「自分へのアポイント」です。 では、具体的なやり方です。 @自分一人でやる重要な仕事を A4週間先まで Bスケジュール帳に記入する C時間としては一日に1〜2時間程度でOK! ということになります。やってみてください。 一日に1〜2時間の「自分へのアポイント」を、4週間先まで確保することは、比較的容易だと思います。出張等で「自分へのアポイント」を取れない日は、ムリして取らなくて結構です。 問題は、その確保した時間で何をやるかです。具体的な仕事の内容を書き込んでみてください。 4週間先まで書けた人は、立派です。通常は、10日〜2週間ぐらいで、先は書けなくなります。 私は、この書けなくなる限界点を「仕事の先見性」を呼んでいます。 1週間先までしかかけない人は、先見性1週間、2週間先までしか埋められない人は、先見性2週間、そして、4週間先まで書けた人は、仕事道の免許皆伝です。 ただ、その際のチェックポイントが一つだけあります。 4週間先まで書けた人でも、免許皆伝とならないケースがあります。それは、4週間先まで、他人とのアポイントで予定が結構埋まっている人です。他人とのアポイントが決まっていると、自分一人でやる仕事も、書き出しやすいものです。会議の準備とか、商談の準備とかです。1〜2週間で、自分へのアポイントが止まってしまった多くの人は、他人とのアポイントも1〜2週間先まで、埋まっているからではないでしょうか? つまり、本当の意味での、自分へのアポイントは、他人とのアポイントとは関係ないところで、自分の仕事を組み立てられるか、というところにあります。これができてくると、「仕事に時間を貼り付ける」ことができるようになります。そして、仕事の組み立てが全然違ってきます。まさしく主体的、積極的な仕事への大変身です。成果も出ます。力もつきます。まわりも楽になります。(第48節で述べたように、「はたらく」とは、「はた=まわり」が「らく=楽」することです) |
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